損をする個人投資家のパターン

ここで、なぜ当時の野村證券がすっ天井に近いところで客に株を買わせるのかについて説明を加えます。これは私が個人投資家の方に訴えたいことでもあります。野村證券は客にわざと損をさせるためにそんなことをやっていたわけではありません。結果として、客が損をすることが多かったというだけで。

野村證券を始め、当時の証券会社は「売買手数料の極大化」のためにこれをやっていました。株価というのは典型的に次のような動きになることが多くなります(極端な絵ですが)。

「顧客にどれだけ損をさせ」「何人部下を辞めさせたか」を自慢するかつての野村證券の営業マン…新人研修の担当部長は「法令違反を犯して表営業できなくなった社員」_2

矢印あたりで株を買うと、すでに株価は高値圏なので、ちょっと上がると怖くて投資家はすぐに売りたくなります。まさに時間当たりの売買回数を増やすにはもってこいの相場局面だということです。

矢印の局面では、買ってから「上がるか」「下がるか」を回数だけの確率で判断すれば上がる確率のほうが圧倒的に高くなります。矢印の局面での出来高は、暴落した後の出来高の10倍ぐらいあるかもしれません。

つまり、天井近い株を顧客に売買させるのと、暴落した株を買わせるのでは、証券会社の売上高(手数料収入)は10倍違うのです。でも、こういう売買を繰り返していると最後には大きな損失をこうむる可能性も高くなります。

証券会社による手数料稼ぎの高速回転商いの推奨は昔の話で、今ではもう行われていません。しかし、今でも株価が急騰すると出来高が大きく増えます。勢いのある株に飛びつく個人投資家がまだいっぱいいるということですね。

当然ながら株価のピークを当てるのはとても難しく、うまく売り逃げられる投資家もいればそうでない投資家も出てきます。相場が高騰し、矢印の局面で買ってちょっと儲かって売って、その後また買ってまたちょっと儲かって売って、という「成功体験」を連続して経験すると、嬉しくて脳がマヒ状態になって抜けられず「依存症」状態になるのかもしれません。

今でも株式投資で損をする典型的なパターンは矢印あたりで買う人たちだと思います。

おそらく、この人たちは株価が上がってくると居ても立ってもいられなくなるのでしょう。でも、いったん買ってしまうと今度は怖くなってちょっとした儲けですぐに売るのです。そして、その後株価が上がってくるとまたそわそわして買いたくなります。そういう人たちなのです、損をする人というのは。