「4割の自治体が消滅」は本当か?

――有識者からなる「人口戦略会議」という民間グループは、「今後30年間で744自治体が消滅する可能性がある」と発表しました。これは全自治体の4割にあたりますが、この数字をどう思いますか?

鈴木 これは20~30代の若年女性が今後、どう推移していくかを調べた統計がもとになっています。2050年までに、この若年女性人口が半数以下になる自治体を「消滅する可能性がある」としています。

ただ、これは取り組みしだいで解決できる問題だと私は思っていて。実際に私が取り組んだ事例でいうと、石川県の羽咋市(はくいし)がまさにそうでした。

「女性に魅力あるまちづくり」を目標に掲げた羽咋市は、20代の女性が男性に比べて1.4倍も市外に流出していることが調査でわかったのですが、その理由は皮肉にも「学力の高さ」。小学校と中学校の学力は石川県が全国1位で、中でも羽咋市はトップだったんです。

つまり、高い学力を持つ若者たちが大学進学で首都圏に出て、そのまま就職、結婚してしまい、羽咋市に戻ってこないという実態が浮き彫りになりました。ここに地方創生のヒントがあると思ったのです。

地方創生担当大臣賞を受賞したときの鈴木氏
地方創生担当大臣賞を受賞したときの鈴木氏
すべての画像を見る

このタイミングで私は羽咋市の担当者と知り合ったのですが、女性を対象にしたセミナーを開くことにしました。テレワークを使って都会の仕事を得て地元で働ければ、女性層の流出は防げると思ったからです。

セミナーを開いておしまいにするのではなく、セミナー後も受講者一人ひとりに寄り添って、就業先の案内にも個別対応するようにしました。同時に、この講座の受講生を地元の企業に紹介して、地元の就業につなげるというアイデアも浮かんだのです。

この取り組みが評価され、後に「地方創生テレワークアワード」で地方創生担当大臣賞を羽咋市と弊社が一緒にいただくという評価も得ました。効果が出るのはまだ先かもしれませんが、じわじわと広がっている手ごたえを感じています。

何もしなければ、地方自治体は過疎化が進み、本当に消滅してしまうかもしれません。一方で、東京一極を避けるような施策をどんどん打っていき、世界や若年層にアピールできれば、「魅力的な地方」は創生できると思っています。

これからが正念場。地方からニッポンを元気にしていきたいですね。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班