「子どもが読むからなるべく常識に囚われない発想をしたかった」

――『サウナウォーズ』では、原稿に消しゴムをかける要領でガラスに石をこすりつけ、閉じ込められたサウナから脱出したり、ご自身の漫画家人生の経験を活かしてデスゲームから生き残る演出がすごくおもしろいです!

閉じ込めたはいいものの、どうやって脱出させるべきかって考えるうちに解決策として今までの漫画経験から「何かないかな」と考えてフッと思いついたんです。

ちなみにその消しゴムのエピソードは、大体60ページぐらいの原稿の下書きを消したときの出来事なのですが、すべて消し終えるのにおよそ8時間はかかったかな。消しゴムが6個なくなっちゃうんです。

〈漫画あり〉Xで1100万回表示超え『サウナウォーズ』、漫画家歴40年の大ベテランの「消しゴム6個分、8時間かかった下書き消し」経験から生まれたデスゲーム脱出法とは_2

――消すだけでそんなに時間がかかってしまうなんて……。

小学生くらいの子どもだとちょうど学校に行って、帰ってくるまでの時間くらいにはなっちゃいます。サウナウォーズは、そういったこれまでの僕の漫画経験をもとにしたエピソードが多くて、昔の話を思い出しながら何をネタにしたらよいかアイデアを作っていました。

ただサウナをテーマにすると、話の都合上どうしても個室がメインになってしまうため、背景的につまらなくなってしまう。そこでいろいろなタイプのサウナを描くためにも、各地のサウナ施設へと取材に行ってアイデアをひねり出すようにしました。加えて、子どもが読むからなるべく常識に囚われない発想をしたかったんです。

今でも漫画のすべてをアナログで描く穴久保先生の机の様子
今でも漫画のすべてをアナログで描く穴久保先生の机の様子

 ――第4話で登場した車内をサウナへと改造した蒸気機関車は、まさにありそうでなかったタイプのサウナになっていますよね!

もともと、蒸気機関車が大好きだったのも関係しています。蒸気機関車って燃料を燃やした蒸気で動くワケですから、「あ、これはもうサウナだ」って閃いたんですよ(笑)。使わない手はないな、と。

ちなみに取材でサウナに入っているときは、漫画のためによくほかのお客さんを観察しているんですが、わりと「何ですか」って注意されることがあって。なるべくじろじろ見ないようにはしているものの、体つきとか骨格を参考にしたいんで薄目で見ています。サウナだけではなく、そこで熱さを耐え忍ぶ人間も描きたいんですよ。