サマンサタバサは粗悪品を売っていたというのは本当か?

サマンサタバサは、超セレブを起用した大々的なプロモーションを行なっていたことで知られている。ヒルトン姉妹、ミランダ・カー、ビクトリア・ベッカム、マリア・シャラポワなど一流セレブがプロモーションのために日本を訪れていた。

サマンサタバサの新作発表会でのニッキー・ヒルトンさん 写真/shutterstock
サマンサタバサの新作発表会でのニッキー・ヒルトンさん 写真/shutterstock

国内のブランドでそのような宣伝活動が行なわれるケースは少なく、サマンサタバサが日本を代表するブランドの一つに育っていたことは衆目の一致するところだった。

ただし、派手な宣伝活動を行なっていたため、サマンサタバサには固定観念が付きまとうようになった。それが高粗利・高広告宣伝費というものだ。原価が安い商品を高値で売る目的で、巨額の広告費を投じているというものである。すなわち、低品質の商品に過度な広告をのせることによって高値で販売し、粗利率を高めることに成功しているというのだ。

しかし、この認識は正しくない。

サマンサタバサが隆盛を誇っていた2005年2月期の製造原価は40億9200万円。このときの売上高は98億4500万円で、製造原価は41.6%だ。アパレルの原価率は30~50%と言われている。サマンサタバサは極めて標準的な水準だ。

なお、この期の広告宣伝費は2億500万円ほど。売上高の2.1%に過ぎない。セレブを起用して大々的な宣伝活動を行なっていたからといって、過度な広告費をかけていたわけでもないのだ。つまり、ごく普通のアパレルブランドのビジネスモデルを踏襲していたことになる。

それでは、なぜサマンサタバサは凋落してしまったのか。その背景には、このブランドが得意としていた2~5万円という中価格帯の需要の減退が挙げられる。