体験の「提供者」ごとの違い

「体験」の値段を考えるうえでは、体験の「提供者」の違いに着目することも重要だ。

例えば、同じサッカークラブであっても、企業が運営するクラブに所属するのと、放課後のグラウンド等を使って保護者がボランティアで運営するクラブに所属するのとでは、保護者にかかる費用の水準が違ってくる。体験の「提供者」の違いまで見ることで、より細かなニュアンスを把握することができる。

そこで、今回の調査では、「放課後」と「休日」のそれぞれについて、子どもたちが参加している「体験」をどんな主体が提供しているのか、保護者に聞いている。

その結果について、まずは各種の習い事やクラブなどからなる「放課後」の活動から見ていこう。

調査では、①民間事業者、②地域や保護者のボランティア、③学校のクラブ活動、という3つの選択肢を提示した。そして、その回答をもとに、それぞれについて平均の年間支出額を示したのがグラフ5だ。体験の「提供者」ごとに金額の違いが出ているのがわかるだろう。

グラフ5:放課後の体験への年間支出額(提供者別)。『体験格差』より
グラフ5:放課後の体験への年間支出額(提供者別)。『体験格差』より

スポーツ系を見ると、「民間事業者」が運営する場合は平均で約9.2万円かかっているのに対し、「学校のクラブ活動」ではそのちょうど半分の約4.6万円となっている。文化系では「民間事業者」で9万円超、「地域や保護者のボランティア」で約3.5万円だ。こちらも差が大きい。

「民間事業者」で相対的に支出額が大きくなることはイメージしやすいだろう。講師や指導者の人件費、会場や設備にかかる費用が、基本的にすべてお金を払ってサービスを利用する側、つまり保護者の負担(受益者負担)になるからだ。

逆に、「ボランティア」や「学校のクラブ活動」の場合には、コーチに支払われるお金が交通費程度であったり、施設の利用にかかる費用が無料であったりすることで、保護者の経済的な負担が抑えられやすい。

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ただし、地域の野球やサッカーのクラブなどをイメージすればわかる通り、保護者は単に利用者であるだけでなく、無償で様々な活動をサポートする存在として期待される側面もある。つまり、金銭的な負担の少なさと、時間的な負担の多さとがセットになっている場合があるのだ。

ひとり親家庭でかつ働いている場合などが典型的だが、こうした親にとっての時間的な負担が(お金以外の)壁となり、子どもが「体験」の場に参加することを難しくしてしまうケースもある。