ラモーンズやOKAMOTO'Sが実践している「選択的メンバー同姓」制度

さて。

発作的に話は飛ぶが、ラモーンズというアメリカのレジェンドパンクバンドをご存知だろうか?

1974年に結成されたラモーンズのオリジナルメンバーは、ボーカルのジョーイ・ラモーン、ギターのジョニー・ラモーン、ベースのディー・ディー・ラモーン、ドラムのトミー・ラモーンの4人である。

1996年に解散するまで、ボーカルのジョーイとギターのジョニー以外はメンバーチェンジを繰り返し、マーキー・ラモーン、リッチー・ラモーン、C・J・ラモーン、エルヴィス・ラモーンが歴代メンバーとして名を連ねている。

ラモーンズのメンバーは誰も血縁関係にはないが、バンドに加入した時点で全員「ラモーン」姓を名乗ることになっている。

これはバンド結成の際に中心人物だったディー・ディーが、ポール・マッカートニーがザ・ビートルズの前身であるシルヴァー・ビートルズ時代に名乗っていた芸名、ポール・ラモーンにあやかって定めたルール。

いわば“選択的メンバー同姓”という珍しい決まりを持つバンドなのだ。

ラモーンズ
ラモーンズ

ラモーンズを模して同制度を採用したバンドに、日本のOKAMOTO'Sがある。2006年に結成し、現在も第一線で活躍するOKAMOTO'Sの現メンバーはボーカル/ギターのオカモトショウ、ギターのオカモトコウキ、ベースのハマ・オカモト、ドラムのオカモトレイジだ。

オカモトマサル、オカモトリョウスケという脱退した旧メンバーを含め、メンバーは全員オカモトさんだが、その中にオカモトという本名の人はいない。

結成当初は漢字で岡本'sとしていて、由来は岡本太郎へのリスペクトからという、“選択的メンバー同姓”の典型例である。

ロック界にはほかにも、過去のザ・ダットサンズ(全員「ダットサン」姓)やザ・フラテリス(全員「フラテリ」姓)など、数は多くないが“選択的メンバー同姓”をとっているバンドがいくつかある。

OKAMOTO'S
OKAMOTO'S
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さてさて。

話はここでめっちゃUターンして、「佐藤さん問題」に戻る。

日本が夫婦同姓をこのまま制度として続けると、約500年後に日本人全員が佐藤さんになるという試算結果は紹介したが、では世界の趨勢に合わせて選択的夫婦別姓を導入したらどうなるのか。

これについても先の東北大学が試算結果を公表している。

労働組合の中央組織、連合が行なったアンケート調査を参考に、結婚後に夫婦同姓を選ぶ割合を39.3%と仮定した場合だが、日本人全員が佐藤さんになるのは約800年遅れ、西暦3310年になるというのだ。

なんだ。

遅かれ早かれいずれにせよ、日本人はいつかみんな佐藤さんになるのだ。

約1300年後のことなんか知ったことかと言ってしまえばそれまでだが、世の中の人みんなが佐藤さんになったらめちゃくちゃ大変だ。

多様な苗字という日本の文化の一つが失われてしまうのは非常に寂しいし、そもそもどいつもこいつも佐藤さんになったら、銀行の窓口で呼び出されるときなんかに大混乱する(1300年後に銀行の窓口があればの話だが)。

そこで提案。

もう薄々、というかガッツリ気づいていると思うが、“選択的夫婦別姓”と同時に、ラモーンズやOKAMOTO'Sが実践している“選択的メンバー同姓”を、制度として正式に導入すればいいのだ。
 

夫婦および家族は同姓でも別姓でもどっちでもいい。

そのうえで、結束の強い他人同士の集まりで好きな苗字を名乗っちゃえばいいんじゃないかな。

そうすれば、何百年経っても何千年経っても、日本人の苗字のバリエーションはキープできるはずだ。

保守派の皆さんに思い切り叩かれ、学究派の皆さんには鼻で笑われそうな提案だが、そもそも大多数の庶民にとって苗字なんてのは、そんなに大層なものではない。
たかだか150年ほど前にはじまった単なる個人識別の記号なのだから、そんなもんでいいんじゃないの?

あまりにありふれた自分の苗字にまったくこだわりのない、私ことライター・佐藤は、無責任にもそんなふうに思っています。

文/佐藤誠二朗