γ‐GTP
肝機能の健診項目の1つに、γ-GTPがあります。中高年サラリーマンのあいだでは「ガンマ」と言うだけで通じるほど、お馴染みです。酒の席で、数値が高いひとがガンマ自慢を始めることもよくあり、尿酸値(痛風)と共に、中高年の病気自慢のネタになっています。
正式な名称は「γ‐グルタミルトランスペプチダーゼ」と呼ばれる酵素で、肝臓の解毒作用に関わっています。アルコールの大量摂取で肝細胞が傷つくと、血液中に大量に溶けだしてきて、検査値(血中濃度)が上昇してきます。そのため飲酒量のバロメーターと目されているのです。
日本人間ドック学会の基準値は、表24のようになっています。
表25に令和2年度(2020年度)の、東京都の特定健診の結果を載せました。
男性では60代前半まで、10人に1人かそれ以上のひとが、101を超えています。平均値で見ても、40代後半から60代前半までは要注意レベルです。
しかし70代に入ると、101を超えるひとの割合も平均値も、下がってきます。年齢とともに酒量が減るからだと思われます。
女性で101を超えるひとはわずかですし、平均値も50を大きく下回っています。それだけ女性の大酒飲みは少ないということでしょう。
ガンマ自慢のひとの中には、200以上とか、500を超えたという猛者たちがいますが、臨床的には500を超えると完全に危険水域です。すぐにでも治療を始めないと、後戻りできなくなるかもしれません。
しかし飲酒だけでなく、慢性肝炎や肝硬変、薬物による肝障害でも上昇してきます。1回のガンマ値だけでは原因を特定できませんが、断酒して下がれば、ほぼ間違いなく酒が原因です。
ガンマの半減期は約2週間と言われています。たとえばガンマが200だったとすると、2週間断酒すれば100前後に下がるはずです。もし下がらなかったら、別の原因が考えられるため、より詳しい検査が必要です。
逆に酒飲みのひとが健診前の1日や2日、禁酒したからといって、数値が良くなることはほとんど期待できません。健診のせめて2週間前、できれば4週間前から禁酒に励むべきです。そうすれば基準範囲にかなり近づけることができるでしょう。
ただしそれができるくらいなら、最初からガンマで引っかかることはなさそうです。高いと分かっていても、飲むのを我慢できない。それがガンマに対する酒飲みのジレンマです。
図/書籍『健診結果の読み方 気にしたほうがいい数値、気にしなくていい項目』より
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