声優オファーを一度断っていた神木隆之介

「作中で“貧乏ホスト”のようだと評される場面もあるように、芹澤はぱっと見に爽やかな好青年ではありません。しかし、見た目にはそんな印象を与えるのに、言葉の端々から真面目さや誠実さがにじむのが魅力だと思います。『友達の心配しちゃ悪りぃのかよ』という台詞だったり、教師を目指しているところ、教員試験に来なかった草太の様子を見にくるところなど、人柄の良さがにじみ出ています」(トリュフさん)

芹澤朋也 ©2022「すずめの戸締まり」製作委員会
芹澤朋也 ©2022「すずめの戸締まり」製作委員会

芹澤の声優を務めているのは俳優の神木隆之介。一見するとミスマッチのようにも思えるキャスティングで、神木自身、「キャラの見た目に合うような声が出せない」と、一度はオファーを断ったという。

しかし、新海監督が食い下がり、ホストのようなチャラい見た目である一方で、友人を大事に思う真面目さと、人から愛されるような人なつっこさを神木の声で表現してもらいたいとねばり、オファーが実現したそうだ。

確かに、初登場時は「ん?」と思ってしまうかもしれないが、芹澤のルックスと内面のギャップが垣間見えるシーンがある度に、神木の声がハマり役に感じてくる。

「ギャップのよさを語る際に、クールなヤンキーキャラが子猫を拾うとかがよく例として挙げられますが、反社会的なことをやっているとかではなく、少し胡散臭く見えるだけの普通の大学生というのが芹澤のいいところだと思います。ちょっと危ないバイトをしていたこともあるようだけれど、あくまで、都会に出てきてちょっと方向性を間違ってしまっただけの誠実な人、というのがとても好きです。

あと、鈴芽と環さんが喧嘩をして空気が悪くなっている車内で、河合奈保子の『けんかをやめて』(作詞・作曲/竹内まりや)を流したり、ダイジンに『ねーこ!』と話しかけたり、『にゃにゃにゃにゃにゃにゃ~♪(ルージュの伝言)』と鼻歌を歌ったり、屋根が上がらないオープンカーを修理せず乗っていたり…。そういうちょっと適当なところが、等身大の大学生っぽい、身近なキャラに感じられて好きですね」(トリュフさん)

©2022「すずめの戸締まり」製作委員会
©2022「すずめの戸締まり」製作委員会
すべての画像を見る

重要キャラではあるものの、あくまでサブキャラであることから、登場時間はそれほど多くない芹澤。それでも彼の一つ一つの台詞やシーンは観客にインパクトを与え、映画に大きなアクセントをもたらした。

映画の公開が終わった後も、『すずめの戸締まり』公式Xが芹澤に関するポストをすれば瞬く間にバズるほどの大人気ぶりだ。

「私が一番好きな台詞は『闇深ぇ』ですね。面倒くさいことに首を突っ込んでしまっているなと感じていても、目の前で自分にすがってくる女性をほうっておけないあの感じがとてもとても好きです。小説『芹澤のものがたり』で、“長男で、仕送りを遠慮している”と明かされていましたが、自分より歳下の家族の面倒を見てきた長男感を、あの台詞・シーンから強く感じます。落としてしまったソフトクリームが哀愁を誘っているのがまた良い。

あと、ラーメンを食べる際に、眼鏡を取っていなかったのもちょっと推しポイント。レンズに色が入ったオシャレ眼鏡なのに、ラーメンで曇っても取らないということは本当に目が悪いんだろうなぁ。伊達じゃないんだなぁ、と感じて好感度が高いです」(トリュフさん)

今回の地上波初放送で、どれだけの人がまた新たに芹澤の沼にハマってしまうのだろうか。本編だけでなく、芹澤にハマる人たちのSNSの盛り上がりにも注目だ。

取材・撮影・文/集英社オンライン編集部