パパ活ならぬ「ジジ活」は
相手の人生に深く関わる仕事
トミコさん(51歳)は、介護福祉士の資格を持ち、実際に訪問介護の仕事をする一方で「ジジ活」もする女性だ。相手は75歳の独り暮らしの男性だ。
「年齢とともに注意力も筋力も落ちてくるし、単純な身体能力も落ちてきます。ちょっとしたところで転んでしまったり、よろけた時に自分の体を支えることができずに、倒れ込んでしまったりします。だから、一緒にいる時はいつでも対応できるように、さっと手を伸ばせば体を支えらえるくらいの距離感を保つようにしています」
また、一緒に行動をする時には、細かく声をかけるようにしているともいう。例えば、「次の角で曲がるけれど、段差があるから気をつけてね」「タイルが少し濡れてて滑るから気をつけてね」といった具合だ。
「歩幅が小さいから歩くのもゆっくりだし、すり足になるからほんのちょっとの段差でもつまずいちゃう。また、高齢者の特徴なのですが視界も狭くなるんです。だからお酒を飲んだ時には要注意です。一緒に銀座などに飲みに行けば人も多いし、駅などには階段もある。私は普段仕事で高齢者の方に接しているので、自然に対応できますが、福祉関係のお仕事をされている方は、ジジ活に向いているなと思います」(トミコさん)
相手の方とは月2回程度会うそうで、「そろそろお時間を作ってくれないか」と打診のLINEが届くと、「では、少し寒くなってきたのでお鍋でも食べに行きましょうか」などと彼女からプランを提案するという。高齢者はインターネットで調べるのが得意ではないため、トミコさんに計画をゆだねるが、それもまた相手にとっては楽しみで、電車に1時間ほど乗って飲みに行くなどびっくりするほど活動的だという。
「怪我や病気、体調不良が若い人よりありがちなので、ドタキャンもあります。『あれ?最近連絡が来ないな』と思っていたら、『お酒を飲んだら転んでしまい、大事を見て少し入院していました。退院したので会いましょう』なんてこともありました。もっと早く言ってくれたらお世話しに行ったのにと言いましたよ」(同)
彼女は完全に相手のニーズに合わせてお付き合いをしていると話す。ジジ活とはもはや、「彼女+介護士」という超技能職なのではないか。このまま交際が続けば、ここに家政婦も加わるかもしれない。
「結婚したから配偶者以外とは出会うことすら良くないこととされる風潮がありますし、ジジ活や風俗のようなものは倫理に反するという考えの人も多くいますが、私にとっては介護業務の延長……というか、こっちが本当の介護の仕事なんじゃないかと思っているくらい。人生にものすごく深く関わっているなという充実感がありますね」(同)
そう言うトミコさんは、かつて自分の祖母の介護もしてきた過去を持つ。
「介護の仕事の現場では、ふとした時に性の話になると、『こんな歳だから、性的なことはさすがにね』と言う女性もいます。そういう時、抑圧していないかと心配になります。私の祖母は96歳まで生きたのですが、晩年は認知症がひどく、食べても食べてないと言ったり、8時に起こしてくださいと言われたので起こすと、その3秒後には『寝かしてください』と言って寝てしまうような日々でした。
そんな時期に、『おじいちゃん以外とデートしたかったな』『おしゃれして出かけたかったな』とずっと言っていました。心残りだったのかなと思うんですよね。人と人の関係って様々で、夫や妻以外の相手と関係があったとしても、それを一概に悪とするのはおかしいと思います。配偶者以外の人との触れ合いの中で、自分の生きがいを見つける人もいるわけですし……。結局、自分の生きたいように生きるのが正解なのかもしれませんね」(同)
その人が生きたいように生きる時のサポートを、彼女はスペシャルな介護士として行っているのだと筆者には思えた。