「訪朝が再開されるなら必ず一番乗りしたい」

とはいえ取材競争を繰り広げる各局が本当にほしいのは、横並びになるこうした公式発表の映像ではなく、他局とは違う独自素材だ。

だが日朝間では、金正恩氏の妹の金与正氏が3月25日の談話で、日本側が北朝鮮に対水面下で首脳会談開催提案を画策してきたことを暴露。翌26日には日本が拉致にこだわっていると非難し「日本側とのいかなる接触も交渉も拒否する。朝日首脳会談は、われわれにとって関心事ではない」と“交渉打ち切り宣言”をした。

「さらに北朝鮮は金与正氏に続き、崔善姫外相らも日本を非難する談話を出しており、首脳会談や拉致問題進展は当分ありません。もっとも、北朝鮮はこれほど支持率が低い岸田政権と対話をする気は最初からなかった可能性のほうが高いですが」(政治部記者)

金正恩氏と妹の金与正氏(共同通信社)
金正恩氏と妹の金与正氏(共同通信社)
すべての画像を見る

結局、日本メディアが訪朝できる展望はまだない。それでも各局は指をくわえてみているわけではないという。

「各局とも今は中朝国境から北朝鮮の辺境地を眺めている程度ですが、訪朝が再開されるなら必ず一番乗りしたいと考えています。そのため、北朝鮮大使館の役割をもつ朝鮮総連の幹部に対しては、つながりのある記者がチャンスをうかがって接待をかけ、自局の売り込みを図っています」(外報部記者)

放送ではあまりいい話題では扱われない北朝鮮も、テレビにとっては重要なコンテンツ。金を使いネタがとれる環境のテレビ局には、放送事故でなく、しっかりとしたスクープ映像を期待したい。
                                   
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班