国歌斉唱では“最新バージョン”が歌われた
「激アツです。いいプレーが出たから盛り上がりました」
東京・小平の朝鮮大学校に通う男子学生のグループは終了直後、試合の余韻に浸り、口々に両チームをたたえた。試合は前半26分、なでしこのDF高橋はながクロスバーに当たったこぼれ球を押し込み、後半77分にはMF藤野あおばが右クロスをヘディングで合わせて2点目をもぎ取った。
北朝鮮は81分にFWキム・ヒェヨンが縦パスに鋭く反応して押し込み、最終盤まで猛攻を続けたが、なでしこがしのぎ切った。
「後半になって(北朝鮮チームが)いい感じになってきたんやけどね。もうちょっと早くあの調子になってほしかった」(60代の在日朝鮮人女性)
「日本はうまかった。ウリナラ(わが国=北朝鮮)が悪かったというのでなく日本が強かったと思います」(朝鮮大学生)
アウェーの北朝鮮側のゴール裏は試合開始1時間以上も前からチームカラーの赤に身を包んだ在日コリアンの応援部隊に埋め尽くされ、北朝鮮の歌をアレンジした応援歌が次々と繰り出された。
「コンギョ(攻撃)、コンギョ」を連呼し、日本のネットでも「中毒性があってハマる」と話題になったことのある曲、『攻撃戦』も歌われた。
「試合開始直前の国歌斉唱では“最新バージョン”が歌われていました。金正恩朝鮮労働党総書記が最近、“韓国と同じ民族だと言うな”と厳しく言っているため、国歌にあった朝鮮半島全体を美しいとたたえた『三千里の美しいわが祖国』という歌詞が『この世界の美しいわが祖国』と変えられました。ほとんどの人が新しい歌詞に従っていたようです」(会場関係者)
日朝関係が悪化した状態が長期間続く中、日本で行われた日朝対決は、北朝鮮選手にとっては究極のアウェーといえる。前述の朝鮮大学生は語る。
「僕たちも大学スポーツでアウェーの戦いの雰囲気をよく知っています。だから『国立をホームにしよう』と思って来ました。みんなで祖国の歌を一緒に歌ったときは涙が出ました」