「日朝が軍事的に緊張関係にあることを考えればまずい」

「テレビ局が突発事態に備えて、それらに関係する映像を事前に準備するのは普通のことですが、おどろおどろしい北朝鮮の軍事パレードが突然画面に出てきたので、TBSの説明に納得できず、意図的だったのではと荒唐無稽な非難をするSNSへの書き込みも現れました」(業界関係者)

さらに非難はネットだけではない。前出の外報部デスクはこう苦言した。

「そもそも問題の映像は北朝鮮当局が軍の威力と金正恩氏の権威を見せつけることを目的に演出、編集した政治宣伝の道具です。そのプロパガンダ映像がテロップや解説抜きの『素』の状態でお茶の間に流れたことは、日朝が軍事的に緊張関係にあることを考えればまずい。TBSは再発防止の努力を徹底的にすべきですね」

ひょんな形で注目される形になった北朝鮮の映像だが、「テレビ各局は近年、北朝鮮報道で独自色を出すことに苦労をしている」と前出の関係者は話す。

「北朝鮮は新型コロナウイルス対策で2020年1月末から国境の往来を厳しく制限し、それ以来日本の報道機関は訪朝できていません。そのため北朝鮮内部の映像はほとんど国営テレビ局のものを使うしかない状況です」(前出)

CM明けに突然現れた金正恩の映像
CM明けに突然現れた金正恩の映像

その国営テレビ局の映像を“フリー素材”のようにこれまで垂れ流してきたテレビ局だが、これにも理由があるという

「北朝鮮国内の映像に絡んでは、2000年代に北朝鮮当局が朝鮮中央テレビの映像を使うなら使用料を払うよう日本の各局に求め、北朝鮮文化省の傘下機関と日本国内の北朝鮮系企業が民放のテレビ局に、北朝鮮映画を無断で放送したとして損害賠償と放送差し止めを求める訴訟を起こしました」(社会部記者)

TBS
TBS

裁判では、日朝が共に加盟する著作権保護を定めたベルヌ条約の解釈が争点になった。

「最高裁は2011年に、日本政府が国交を持たない北朝鮮には条約の効力が及ぶと告示していないことなどから『北朝鮮の著作権を日本で保護する義務はない』と判断しました。北朝鮮の映像素材を無断で使ってもいいとお墨付きを与えた形です。まあ、北朝鮮のテレビや出版物も、日韓を含め他国で報じられた写真などを勝手に使ってますけどね」(同)