謎に包まれていた「トルコ戦スタメン」の真相
話は練習場から再びW杯のピッチへ。6月14日のグループステージ最終戦のチュニジア戦は「守っていて支えになった」(宮本)という長居スタジアムの雰囲気にも支えられ、森島のゴールなどで2対0と快勝。W杯初の決勝トーナメント進出を決めた日本代表は、6月18日、宮城スタジアムでのラウンド16に挑んだ。
3位に入ったとはいえ、相手は他の強豪国と比較しても互角の戦いが期待されたトルコ戦。勝って準々決勝に進むことができれば、相手は初の8強となったセネガル。そして、準決勝はブラジルか? それともイングランドか? と日本国民の中には、一足飛びのそんな議論をする者もいた。
しかし、結果は12分に喫した失点を返せず0対1の敗戦。そぼ降る雨で煙ったスタンドは、茫然としていた。
そのトルコ戦で批判の対象となったのは、日本代表のスターティングメンバー。特にベルギー戦の途中出場のみにとどまっていたMFの三都主アレサンドロを2トップの一角として起用したトルシエの選択には多くの疑問符が投げかけられた。
では、現場では何が起こっていたのか? 3人はこう話した。
中田 トルシエは(2トップの)FWをセットで考えている傾向があったんです。一つは柳さん(柳沢敦)と(鈴木)隆行さん。もう一つは西澤(明訓)さんと、モリシ(森島寛晃)さんという感じで。でも、アレックス(三都主アレサンドロ)は練習ではキレキレでしたし、柳さんはトルコ戦当日の試合では使えないコンディションだったことはわかっていました。ですから、試合前日の練習でも、西澤、アレックスの2トップはやっていたんです。ただ、それは試合途中のオプションの一つだと思っていたので、アレックスが先発という発表があったときに「最初から行くんだ」と思ったのは確かです。
宮本 スタメン発表のミーティングのとき、最後にトルシエと通訳のフローラン(・ダバディ)が入ってきて、トルシエのスーツは紺色からベージュに変わっていたんですよね。それで、僕自身は「あれっ、いつもと違う」と思いました。だからかはわかりませんが、試合前のロッカーもちょっと浮足立った空気があったことを覚えています。
森岡 自国開催で至上命題だったグループステージを突破した後の難しさはあったと思う。トルコ相手にオプションを増やして、さらに上へ進むということはトルシエの中で間違いなく考えていたと思うので、今度会ったときに聞いてみたいですね。
まだトルシエにその真相を聞いたことはないという3人だが、森岡の予想が当たらずとも遠からずと言ったところではないだろうか。