4団体統一とスーパーバンタム級

2ラウンド序盤、井上は左ジャブで警戒しながらドネアと向き合う。しかし間合いへ踏み込むスピードで上回ると、左フックをヒットさせ、ドネアをぐらつかせる。これで獲物が弱ったのを見透かした肉食獣のように、怒涛の攻撃に出る。

連打を浴びせた後、うまくロープを使いながら、強烈な左フックを再び当てた。膝が折れそうになって耐えたドネアを、無慈悲に打ち続ける。仕上げも左フックだった。

バンタム級に敵なし。モンスター・井上尚弥に階級転向の壁はあるか_f
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バンタム級に敵なし。モンスター・井上尚弥に階級転向の壁はあるか_h

ドネアはコーナーで崩れ落ちた。

「(ドネアが)ダウンしたのを見て、”夢じゃないか”と思いました。うまくいきすぎて」

井上は口の端だけで笑った。学生時代からの憧れで、尊敬すべきチャンピオンを完膚なきまでに叩き潰した。

「(強気の発言で)自分にプレッシャーをかけることで、トレーニングの意気込みだったり、向上心だったりを上げたいと思ってやってきました。発言したからには、目標に到達するまでやらないといけないって。その不安に打ち克つことの大切さを実感しています」

強気の発言を貫いて、大きなイベントで熱狂を生み、晴れやかな勝者となった。

自分を追い込むリスクを背負ったのは間違いない。Amazonプライムビデオの配信だけでなく、スポンサーも集まっているが、期待を裏切ると自身の価値も暴落する。有言実行は、胆力と実力の証か。

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涼やかな表情に潜む不敵さに、彼の中の怪物が垣間見えた。では、モンスターが次に照準に捉えてるものとは?

「バンタム級での4団体統一が目標なので、年内に統一戦を…。リーチがかかったので、そこは行きたいと思いますが。新たなステージとしては、スーパーバンタム級に上げたいですね」

年末、WBO世界同級王者のイギリス人ポール・バトラーとの4団体統一戦が行われるとなったら、さらに注目を集めることになるだろう。

会見後のフォトセッション、井上は三つのベルト、一つを腰に巻き、二つを肩に下げ、ポーズを取った。左右に陣取ったカメラマンに顔を向け、サービスで力こぶを作る。白い歯がこぼれ、シャッター音が鳴った。

撮影/スエイシナオヨシ

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