引き続き、タレント、コラムニストの小原ブラスさんのインタビューをお届けします。上京して10年、そして30歳の誕生日の前日という節目に、「人生の一番大事な時期」を過ごしたという東京・中野にてインタビューを行いました。「一般社団法人外国人のこども達の就学を支援する会」の理事長に就任した経緯、子どもの頃に支えてくれた人達への感謝、そしてロシアが今年2月に開始したウクライナへの軍事侵攻についての率直な胸の内を語ってくれました。(この記事は全2回の2回目です。前編を読む)
支えてくれた人達に「ありがとう」と言う代わりに
日本には現在、2万人もの学校に通っていない外国人の子どもがいます。義務教育はあくまでも「日本人の子どもを持つ親」に課せられた義務であり、「外国人の子ども」は該当しません。外国人労働者が子どもを連れて来日し、子ども達は居住地の公立学校に編入するも、日本語が分からないから学校の授業について行けない、学校から配布されるプリントにも何が書いてあるかわからない、そのうち学校から足が遠のく……というケースが増加しています。インターナショナルスクールは学費が高額なので現実的な選択肢ではありません。
移民を多く受け入れているヨーロッパ諸国では、日本よりも状況が深刻化。学校に通っていない外国人の子ども同士で集まってグループを形成し、ギャング化し、犯罪率の上昇につながり、「外国人がいると治安が悪い!」と差別が生まれ、差別された側もやり返す……という悪循環が生じています。将来的には日本でも同様の社会問題に発展する可能性も。それを知った小原さんは昨年、「一般社団法人外国人のこども達の就学を支援する会」の理事長に就任しました。寄付を募り、その寄付金で外国人の子ども達に日本語と、学校教育で習う教科をリモートで教える活動をしている団体です。小原さん自身もメディアでの宣伝活動に加え、リモートで子ども達と日本語会話をしてレベルチェックを担当することも。
「僕自身はロシアで飛び級で4歳で小学校に入学したんだけど、5歳で来日して保育園からやり直しになって。まあ日本語がわからなかったから、結果的に良かったんですよね。でも受け入れてくれる保育園がなかなか無くて。カメルーン出身で僕と同じく姫路育ちの漫画家・星野ルネさんも通った広峰保育園の園長先生がたまたま父の知り合いで、ルネさんの成功体験もあったこともあり、受け入れてくれたんです。現場の先生がすごく頑張って、日本人の子どもと繋いでくれて。ちょっとずつこれは何、これは何って教えてもらって。
あと、関西って公園に何か知らんけどオッサンがずっといるんですよね。そのオッサンが僕に興味持ってくれて『来いや来いや』って、日本語教えてくれたんですよ。決めつけたらあかんかわからんけど、関西の人って他人にちょっかい出したり話しかけるの好きなんですよね(笑)。今思えば、近所の人にめっちゃ支えられてた。でも当時は何とも思ってなかった、当たり前のことって捉えてたから。大人になって初めて『あれって当たり前じゃなかった! 感謝すべきことやった……』と気づいたけど、もうお会いすることも出来ないし感謝も伝えられない。せめて彼らが僕に日本語を教えてくれたりサポートしてくれた、その意志を繋ごうと。同じようなことを次は自分がやることで、彼らの意志を繋げることになるんじゃないかな」
実はめっちゃ、歯に衣着せてます
本連載でインタビューした皆さんに必ず「身体のウェルネスのためにしていること」「心のウェルネスのためにしていること」という定型質問をしています(詳細は記事末)。小原さんが「心のウェルネスのためにしていること」が、オンラインのメンタルトレーニング。そのトレーニングを受けて、自身の「外国人の見た目」にコンプレックスを抱いていたことに気づいたそう。「歯に衣着せぬ発言」と形容されることの多い小原さんですが「実はめっちゃ歯に衣着せてて……」と自己分析します。
「日本で暮らしていて、自治体指定のゴミ袋の値段が高いとか、住民税が高いとか、不満いっぱいあります。でもだからって、日本を好きじゃない、わけじゃない。日本を愛してるけど、愛してても悪い部分が見えるから、文句は言いたい。僕はずっと日本で育ってて、皆と同じ感覚で不満やのに、『不満やったら国へ帰れ』と思われてしまう。だからそういう文句をなるべく言わんようにしたり、言ったとしても後で必ずフォローの言葉を加えたりする。メンタルトレーニングを受けて、そういう言葉をいちいち付け加えていかんとあかん、っていうのがめっちゃ嫌だったんだなって気づいた。
(外国人の見た目ゆえ)子どもの頃から『自分は他の人と違う見られ方をしている』とずっと感じてたからこそ、自己防衛のために『歯に衣着せる』能力が身について、結果的にそれが現在のコメンテーターの仕事に活きてる。ちゃんと衣着せられるからこそ、TVに出られるんですよ。ロシアとウクライナで戦争が起きたことで、ますます歯に衣着せんとあかんくなってしまったし……」