刑務官に必要なのはストレスチェック
さらに、点呼でも意味のわからない慣習があった。
「毎朝の点呼では『4』は『ヨン』ではなく『シ』、『7はシチ』、『9はク』と言う決まりがあって、間違えるとやり直し。緊張からか何度も失敗する人がいると『何回言えばわかんだコラ!』と罵声が飛んでくる。
『この刑務所にはヨン、ナナ、キュウという言葉はない!』って言ってたのに、その刑務官が電話で『はい、第ヨン工場です』って言うんだよ(笑)。そんなコントのような展開でもツッコむのは頭の中だけ。刑務官には逆らえないからね……」
しかし、そのような態度をしてしまう刑務官の心理についても、一定の理解を示す。
「刑務官も受刑者とほとんど同じ生活をするんですよ。宿直用の部屋に泊まって朝早く起きて、刑務所独特の閉鎖的なジメジメした空間で罪を犯したわけでもないのに罪人たちと同じリズムで一日を過ごす。
そりゃイライラするし、ストレスも溜まるでしょう。刑務官の自死ってけっこう多いみたいですしね。そのストレスを受刑者に向けて発散しようってのはあると思うんです」
名古屋刑務所で昨年9月に発覚した刑務官による受刑者への暴行事件も、これらが要因の一端なのではと田代は推察する。「だからこそ……」と田代は続ける。
「刑務官の定期的な面談や診察、検査、ストレスチェックをしてほしい。それだけじゃなく、受刑者への指導に関する行動観察なども大事だと思います」
後編では、服役中の一番辛かった出来事と、田代の現在の生活について聞いた。
取材・文/河合桃子
集英社オンライン編集部ニュース班