独自の路線を歩み続けている
「ニューバランス」と「コンバース」
「ナイキ」は巧みにトレンドに乗りながらプロモーションをおこなっているのに対し、独自の路線を歩んでいるメーカーが「ニューバランス」です。
もともと「ニューバランス」はスティーブ・ジョブズ*が愛用していた991やM1300といったヘリテージを愛する本格志向の層に加えて、アジアメイドのMT580をシュプリームのクルーが愛用したり裏原ブランドの「ヘクティク」がコラボしたりといった経緯からストリート層の支持も集めているという、2面性を備えたブランドでもあります。
またコラボレーションも「コムデギャルソン」や「パレス」、「オーラリー」などのブランドとアジアメイドのモデルでおこなったほか、近年ではUSA・UK製の品番でも「ダブルタップス」や「エメレオンドレ」、「キス」といったブランドとコラボをおこなったことで注目を集め、通常モデルも枯渇するほど人気を博しました。
本来、本物志向のヘリテージ層で「ニューバランス」が好きな人は流行り廃りに関係なく履き続ける傾向がありますが、良くも悪くも常に安定した購買行動を取るため、爆発的な人気を集めることは少ない傾向にあります。
しかし、彼らの需要を掘り起こすきっかけとなったのが、ML2002Rの復刻と993の日本発売です。低価格帯の2002とハイエンドモデルの993と、ともに異なるレンジで高い人気を誇るモデルでしたが、その人気を煽ったのがコロナ禍における品薄です。
2022年前半までML2002Rは試着もできないほどの品薄でしたし、特にUSA製の993はコロナで生産ラインを縮小した関係もあって品薄状態が続いたことで逆に需要に火を付ける結果になりました。
これらは「ニューバランス」が意図して起こしたハイプ(≒トレンド 入手困難なほど人気のスニーカー)ではありませんが、スニーカー業界の人たちのなかでも今まで「ナイキ」ひと筋だった人が「ニューバランス」を履きはじめるなど、少しずつ人気が高まりつつありました。
しかし、コロナ禍以後の急速なインフレによって顧客も製品の良さは認めているものの、若者の手に届かないブランドになりつつあるのは否めません。