夜に泣き叫ぶ声が1時間続いた

それから3年ほどして、この親族は知人の民生委員から志保容疑者の母親の死を知らされたという。

「民生委員の話ですと最後は働けなくなって生活保護を受けていたそうです。このころも志保さん夫妻は子どもを連れてアパートにちょくちょく来ていたので、『お母さんが亡くなったのならアパート解約のお手伝いをしましょうか』と伝えに行きました。

玄関口に出てきたのは健一さんで、『ちょっと待ってください』と奥の和室で志保さんと話し込んでから戻ってきました。健一さんは『妻がお母さんは入院して2、3日で亡くなってしまったので、心の整理がついてないと言っています。だから、まだ貸しといてください』と言ってきました。その様子からも志保さんは人と関わりたくないんだろうなと思っていました」

逮捕された健一容疑者(撮影/集英社オンライン)
逮捕された健一容疑者(撮影/集英社オンライン)

この大家の親族には、健一容疑者は子供好きの優しい父親に映っていたという。

「アパートに遊びに来ているタイミングで町内会費などをもらいにいったりすると対応するのはいつも健一さんで、志保さんは決まって奥の和室から出てきません。健一さんが玄関口に出てくると子供たちもワーッとドタバタついてきました。2~3歳の子もいたので、昨年に亡くなった子だと思います。

腰も低くて敬語も使えるし、子供好きの優しい父親に見えましたね。むしろ子供を遊ばせたり、面倒を見てるのは健一さんだけだったんじゃないですかね。あるときはベランダで大きなプラスチックのプールのような物に砂を入れて子供たちを遊ばせていました」

“ゴミ屋敷”のようにモノで溢れた自宅マンションの部屋の前(撮影/集英社オンライン)
“ゴミ屋敷”のようにモノで溢れた自宅マンションの部屋の前(撮影/集英社オンライン)

健一容疑者はこのアパートでも家事一切を担当していたようだった。

「朝に部屋を訪ねたときには健一さんが台所に立って料理をしていて、その横で子供たちが立ち食いしているなんてこともありました。1人で面倒を見ていて大変だろうなと思いました。

3年前の大晦日には、夜11時ごろ健一さんがウチを訪ねてきたこともありました。抱っこ紐で子供を抱えて、他に2人の子供を連れて『細谷ですが鍵が見当たらなくて。鍵があったら貸してほしいのですが』とのことでした。ちょうど隣室が空き部屋だったので、そこで待っていてもらったんですよ」

このときも志保容疑者は黒いフィルムを窓に貼った車の中から出てこようとしなかったという。

「子供もみんなとても可愛い子たちでした。お菓子をあげると一番上の男の子が『ちょっと待ってて』と部屋から綺麗な石を持ってきて『あげる』と私の手のひらに乗せてくれたんです。

それを見ていた妹も雑草の中に咲いていた花を一輪抜いて『あげる』って。一番下の女の子はまだ小さくて。でも、その子だと思うけど、夜にギャーっと泣き叫ぶ声が1時間くらい続いたことはありました」