「自己申告」はどこまで信頼できるのか?

こうした過少申告がなぜ困るのかというと、飲酒や肥満から生じる問題に対処するための保健サービスへのリソースの割り当てが「バッドデータ」(注:統計学的に理想的なデータに紛れ込んで分析を邪魔する粗悪なデータ)に基づいて行われてしまうことになるからだ。

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摂りすぎると体に悪いとわかっているものについて、摂取量を過少申告するという現象があることには十分な裏づけがある。にもかかわらず、国民保健サービスが集めるデータの大半は自己申告に基づいている。

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究者たちは、「飲酒量は、実際より4割から6割少なく申告されている」という研究結果から、英国における実態を推測しようとした。そこで、過少申告と思われる数字を調整したところ、女性の3分の1、および男性の5分の2が、日常的に大幅に飲みすぎていることが判明した。

体に悪い行動を制限して健康を向上させるための、さまざまな方法の効果について調べる場合も、過少申告の影響が少ない調査方法を考える必要がある。

肥満でダイエット中の人に関する米国の研究では、一部の被験者がカロリー摂取を減らしていると主張しているにもかかわらず体重が減っていなかったため、研究者は被験者の食事内容を念入りに調べることにした。

もしも被験者たちの自己申告がそのまま受け入れられていたら、「体重が減っていない被験者は、まだ食べすぎている」という明白な原因を検証することなく、研究者は稀な病気の可能性を調べることになっていただろう。

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ヤバい統計 政府、政治家、世論はなぜ数字に騙されるのか
著者:ジョージナ・スタージ
訳者:尼丁 千津子
「あなたの今までのセックスパートナーの数は?」男女で平均人数に差が出てしまう本当の理由とは_5
2024年1月26日
2,640円
四六判/368ページ
ISBN:978-4-08-737003-4
【絶賛!】
政策はAI(人工知能)では作れないことを、徹底的にわからせてくれる。
――藻谷浩介氏(『里山資本主義』)

その数字は、つくり笑いかもしれないし、ウソ泣きかもしれない。
データの表面を信じてはいけない。その隠された素顔を知るための一冊!
――泉房穂氏(前・兵庫県明石市長)

【データの“罠”が国家戦略を迷走させる!? ビッグデータ時代の必読書!】

「データ」や「エビデンス」に基づいてさえいれば、その政策や意思決定は正しく、信用できると言えるのか?

私たちは政府統計を信頼しきっているが、その調査の過程やデータが生み出されるまでの裏側を覗けば、あまりにも人間臭いドタバタ劇が繰り広げられていて驚くはずだ。本書は英国国家統計局にも関わり、政府統計の世界を知りつくす著者が、ユーモア溢れる筆致でその舞台裏を紹介した一冊である。

扱われるのは、英国の移民政策、人口、教育、犯罪数、失業者数から飲酒量まで、実に多彩な事例。それぞれの分野で「ヤバい統計」が混乱をもたらした一部始終が解説される。いずれも、日本でも同じことが起こっているのではないかと思うような話ばかりだ。

現在、この国では「根拠(エビデンス)に基づいた政策決定(EBPM)」が流行り言葉のようになっている。人工知能の発達も急速に進みつつあり、アルゴリズムに意思決定や判断を任せようとの動きも見られる。「無意識データ民主主義」といった言葉も脚光を浴びつつある。しかし本書を読めば、数字やデータだけを頼りに物事を決めることの危うさが理解できるはずだ。

数学や統計学の予備知識はいっさい不要。楽しみながらデータリテラシーが身に着く、いま注目の集英社シリーズ・コモン第3弾!

【目次】
第一章 人々
第二章 質問する
第三章 概念
第四章 変化
第五章 データなし
第六章 モデル
第七章 不確かさ
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