「セックス」や「パートナー」の解釈の違い
こうしたことがなぜ起きるのかについさらに分析したところ、これまでの経験人数を多く、または少なく答えたいかどうかはジェンダー規範の影響があることに加えて、この質問での「セックス」や「パートナー」の解釈が人によって異なっているのが原因だったという。
これは、自己申告に基づく調査だったために、個々の回答者がつくった指標が実際と合わなかった例だ。自己申告によってつくりだされた指標は事実を歪めてしまうことが多い。なぜなら、人は自分の都合のいいように答えるからだ。回答者は物事を大げさに、または控え目に言ったり、あるいは意図的であろうとなかろうと、自分自身について本人が理想とするような印象を他人に与えようとしたりする。
だとすると、標本調査のすべての質問は、そういった自己申告がもたらす問題に影響を受けているのではないかと思われる。確かに、ある程度はそのとおりなのだろう。なぜなら、どんな調査も、回答者が正直に答えることが前提とされているからだ。
とはいえ、「右利きか、左利きか」「コーヒーか紅茶のどちらが好きか」といった質問に対して、回答者が噓をついたり事実より大げさに語ったりすることはまず考えられない。
世論調査においてさえ、論争が続いている話題に対する意見や、首相についての正直な感想を求められたとき、あえて噓をつく動機は回答者にはない。ここ英国では、そうした質問に対して自分の見解を恐れずに語れるからだ。
事実と異なる回答が多いのは、セックス、食事、飲酒、収入といった、プライバシーに関する質問の場合だ。こうした質問内容は、回答者にとって、後ろめたさや恥ずかしさ、自信喪失といった感情を引き起こすものなのかもしれない。