自分の作品は、疑問や不満から生まれている
―2013年のデビュー作『わたしは全然不幸じゃありませんからね!』(エンターブレイン)では、不安定な自意識が描かれていましたよね。そこに共感した人も多そうですが。
当時の漫画は読み返せないです(笑)。今思うと、結構ひどいことを描いてしまっている気がします。
漫画家として「売れたい!」と思って作品を描いても、いざバズったりすると、悪口も比例して増えて、傷ついてしまう。私はネガティブなコメントも真正面からキャッチしてしまうタイプなので。
–––(担当編集)『じゃあ、あんたが作ってみろよ』開始前には、「私が不祥事でも起こせば、漫画も読んでもらえるのかなぁ?」と言っていましたよ。
そうでしたっけ(笑)!? 不祥事も炎上も起こしたくないですよ! 人生終わる!…… でも、今でも十分ネガティブですが、料理や暮らし全般に興味を持てるようになって、かなりマシになったと思います。
生活としっかり向き合うことで、「モテたい!」とか「人気者になりたい!」とか「寂しい!」とか、自分のことを考える時間が減ったんです。そういう意味でも、料理を好きになってよかった。
–––「自分のことを考えなくなる」ことが、精神安定に繋がるかもしれない。それは結婚に限らず、同居で見出せた?
私の場合はそうでした。人生って、勉強だけじゃどうにもならないことが多すぎて……。『じゃあ、あんたが作ってみろよ』の鮎美では、外に出ることで価値観が変わっていく様子が描ければなぁと思っています。
別に立派なことはしなくてもいいから、周囲の影響を受けながら、何をしているときが楽しいのかを探していく。人生、なんでもやってみるといいと思うんです。これはまさに自分に対して言っていることですが。
–––鮎美のようにテキーラを飲んでみるとか、誰かと同居してみるとか。
そうそう。そういったことが苦手な人も、実は自分でキャラ付けしているだけかもしれないので。
こういうことを、最近ようやく描けるようになってきた気がします。年齢を重ねると、新しい世代の価値観に追いつけなくて焦ることが増えてくるんですけど、それは見える世界が変わっていくってことなのかもしれません。
–––今後はどんな漫画を描いていきたいですか?
自分の場合、ほとんどの作品が、疑問とか不満から生まれているんです。だから、そういうネガティブな側面も漫画にできたらなぁと思います。理想は、そのときそのときに見えた景色や、気づいたことを描き続けながら80歳ぐらいまで漫画家でいたいです。