「誰かと暮らしていくには、話し合いが必須」
–––谷口さんが漫画家・真造圭伍さんと結婚したのは6年前ですよね。
私の場合は夫も漫画家で、2人とも家で仕事をしているんですね。彼が忙しいときに自分が暇だと、同業者として嫉妬してしまいそうで……。ある程度距離がないと「結婚生活が続けられない」という強迫観念があったんです。だから延命措置として別居していたんですが、コロナ禍を通してやっぱり一緒に暮らしましょうという結論になり、今は同居しています。
–––同居にシフトした理由は?
夫がコロナ禍で体調を崩してしまったのと、私、コロナ禍で一気に老けた気がするんですよ(笑)。ふと鏡を見たときに「このまま別居を続けていたら、一つ置きの自分を夫に見せることになる」と焦ったので、夫に同居したいと伝えました。
–––同居を始めて、いかがですか?
夫とはいろいろ話し合える仲で、日々「こういうことにストレスを感じている」みたいなことを確認し合っています。良好な関係を維持するためには、家事とかお金の負担とかを、お互い不満がないようにマネジメントするのが一番なんでしょうね。互いに自己実現するために、家をどう回すかっていう。
–––『今夜すきやきだよ』(新潮社)でも、「現代人だろ! 徹底的に話し合え!!」という名言が登場します。
気持ちだけじゃどうしようもないっていうのは、自分の中であります。誰かと暮らしていくには、話し合いが必須。
–––谷口さんは、ずっと一人暮らしだったんですか?
同性の友だち3人でシェアハウスに住んでいたときもあります。先ほどの「料理作れ男」と別れて精神的にまいっているときに、友だちのシェアハウスに交ぜてもらったんです。彼女たちと暮らしたことが、ターニングポイントになった気がします。
–––どんな点で?
ちゃんと生活できるようになりました(笑)。もともと私は、部屋は汚いし食事も適当な人間だったんですけど、同居人が生活を大切にするタイプの人だったので、彼女たちに影響されました。
たとえば2人は持っている食器が素敵なうえに、心が豊かだからそれを貸してくれるんですよ。いい器を使うと、なんでもない料理も美味しそうに見える。そこから料理に目覚めて、ちゃんと生活することの気持ちよさに気づきました。なんとなく、精神も安定した気がします。20代は、本当に自意識過剰だったので(笑)。