フェスを悪用した詐欺は起こり得ない
2024年も多くのフェスが開催される見込みだが、昨年の相次ぐ大型フェスの中止を受けて不安を感じている人も少なくないだろう。特に開催直前での中止となるとチケットの払い戻しの対応についても気になるところだ。
「フェスで詐欺を企てるのは現実的ではない」
そう述べる井出氏は、昨今に見る突然のフェス中止について、次のようにコメントする。
「フェスを開催するためには、イベントのコンセプトや目標を決め、総定する集客を見越した適切な会場の確保、アーティストのブッキング交渉、プロモーターの選定、運営スタッフの手配など、準備することが非常に多岐にわたります。たとえば、日本武道館を抑えられるのは、信頼と実績のあるプロモーターだけしか行えないんですよ。
詐欺をするにしても労力がかかりすぎるし、計画して実行するハードルが高い。加えて、狭い業界内で悪い評判が立つリスクを考えれば、コンプライアンスが求められる時代に『フェスを悪用した詐欺』は起こりづらいのではないでしょうか」
井出氏は、長年フェスやイベント制作に関わってきた集大成として、富士山の麓のキャンプフェス「FUJI&SUN」を2019年からオーガナイズしている。
富士山の麓という抜群のロケーションはもとより、大自然の中でのキャンプやワークショップ、音楽ライブ、ケータリング店など、コンテンツも充実しており、キャンパーや子連れのファミリー層を取り込むことに成功しているという。
「2024年で5回目の開催となりますが、将来的には『FUJI & SUN』を次世代にバトンをつないでいけるようにしていきたいと思っています。フェス市場はまだ30年くらいの業界なので、ちょうど今の時期が世代交代に差しかかるいいタイミングだと感じていて。
業界が生まれた当時とは時代背景もお客さんのニーズも異なるなか、今の若い世代が新しいフェスの担い手になってくれれば、フェス業界の未来はきっと明るいものになると考えています」
取材・文/古田島大介