地方創生×フェスの抱える「理想」と「現実」

近年では「地方創生×フェス」の流れで、地域振興や町おこしを目的にしたフェスを開催する自治体も増えている。

だが、フェスを地域活性化につなげるのは「そう簡単なことではない」と井出氏は指摘する。というのも、地域に根ざしたフェスを創り上げるには、地元の住民との深い信頼や関係性の構築が不可欠だからだ。

「たとえ動員力のあるアーティストを呼んでも、『県外からの参加者が2〜3日だけ来るだけでしょ』と思われていてはダメなんですよ。周辺地域に訪れる関係人口を増やしたい。新たな地域の魅力を発信したい、などフェスの開催目的にもよりますが、フェス事業者と地元が一枚岩にならないと、継続的な開催は難しいでしょう」

井出氏自身も、三重県の志摩市の海女漁がさかんな漁村「安乗」で野外フェスを開催した経験がある。約3年ほどかけて地元民と交流を図り、人間関係を作るために、足繁く漁村に通った。地元民との関係を構築することでようやく初開催にこぎつけたが、開催はこの1度きり。多方面との連携及び理解が充分にとれず、継続開催の難しさに直面したという。

2022年11月に安乗で開催された地方創生に根ざしたフェス「あのり拍子」
2022年11月に安乗で開催された地方創生に根ざしたフェス「あのり拍子」

「地域創生のフェスをやってみて、初めてわかる“壁”があったなと感じました」