2024年のフェストレンドは「コンパクト、新奇性、クオリティ」

では、何年も生き残り、愛されるフェスにはどのような特徴があるのか。

井出氏は「最初に定めたコンセプトをブレさせず、周囲を巻き込んでいく主催者のエネルギーがあるかどうかが鍵を握る」と語る。

「日本3大フェス(フジロック、サマソニ、ロッキンオンジャパン)は言わずもがな別格です。20年以上続いているのは、ひとえに主催者の情熱や思いの強さにあります。一度灯した火は消さない覚悟と決心を持ち、フェスを開催し続けているのは、本当にすごいことだと思います。しかも、四季の豊かな日本において野外フェスほどリスクの高いビジネスはありません。

台風や大雨といった自然災害はつきもので、チケット完売しても当日にフェスが中止となれば、たちまち大赤字になってしまう。普通の起業家であれば、フェスのような博打を打つ事業はやらないはずです」

それでも、リスクを冒してまでフェスを開催するのは、何物にも変え難い「やりがい」や「感動」があるからだろう。

井出氏が関わった「GREENROOM FESTIVAL」も、当初はサーフィンやスケートボードなどの“ヨコノリ”カルチャーを軸としたフェスから始まった。

「GREENROOM FESTIVAL」のメインステージ
「GREENROOM FESTIVAL」のメインステージ

そこから、規模やコンテンツを拡大して多様化させていった一方、当初のカルチャーは変えずに持続させてきたことが、今でも人気フェスのひとつとして愛される理由だという。

また、今までにない新たな切り口を見出すことも肝になると井出氏は続ける。

「昨年中止となったフェスの中には、独自のコンセプトを掲げたおもしろいコンテンツもあった。いきなり風呂敷を広げすぎず、まずは小さく始めていれば、逆に話題になっていたかもしれません。

そういう意味で言うと、私の知人が2017年に立ち上げた『FESTIVAL de FRUE』は、まだ知られざる“日本初来日”のアーティストを多くブッキングし、コアな音楽ファンを唸らせるフェスとして注目されています。フェスの寿命は10年と言われるなか、今後は大規模なフェスよりも、コンパクト、新奇性、クオリティがフェスに求められるのではと考えています」