「遺族の苦しみについては正直よくわからない」

一方、被告と8回面接した文教大学の須藤明教授(犯罪心理学・家族心理学)が弁護側証人として「拷問への関心と、失恋。希望しない就職先を勝手に母親に決められてしまったことへの現実逃避が事件の動機。虐待を受けた主人公が復讐するマンガを読み、自分を重ねている印象を持った」と証言。更生の可能性について問われると「傷つく経験を整理し、事件に向き合っていくアプローチが必要だ」と話した。

事件後、被害者の自宅に供えられた花や飲み物(撮影/集英社オンライン)
事件後、被害者の自宅に供えられた花や飲み物(撮影/集英社オンライン)

遠藤被告本人は「社会に戻るつもりがないから」と公判でもほとんど質問に答えなかったが、第19回公判では一転してしゃべり始めた。弁護側の求めによる被告人質問では「いろいろなことに疲れていた。長女とのLINEが後押しになって、逃げだそうと決めた。母親に家を出るなと束縛され、暴言を吐かれることが嫌だった。不本意な就職先を一方的に決められ、家と将来から逃げたかった」と動機を説明。また、検察側からの質問には「長女の目の前で家族を拷問し、殺したときの表情を見てみたいという興味があった」と言い放ち、放火した理由を「証拠隠滅もあるが、警察と戦闘するまでの時間稼ぎだった」と述べた。

同公判では被害者や遺族に対して「悪いことをしたなと思うが、特に僕としては何もしてあげることはできないし、遺族の苦しみについては正直、よくわからない。謝罪の言葉を口にしないのは、自分の判決にとって、そっちのほうが心証が悪くなるからです」と淡々と言い切った。しかし、自身の家族について問われるとすすり泣く場面もあり、もろさも垣間見せた。

遠藤被告は一貫して「控訴はしません」と言い続けてきたが、判決を受けて弁護人の1人である藤巻俊一弁護士は「被告と話し合って控訴するかどうか決めます」と述べた。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班