新たな時代のロックスターの象徴だった「ジギー・スターダスト」

デヴィッド・ボウイの確固たる地位を築いた金字塔的アルバム『ジギー・スターダスト』、原題は『The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars』(“ジギー・スターダストとスパイダーズ・フロム・マーズの栄光と没落”)。

1964年、デイヴィー・ジョーンズは若干17歳でレコード・デビューを果たすも、なかなかヒットには恵まれなかった。バンドを変えたり、名前をデヴィッド・ボウイに変えたりと、様々な試行錯誤を経てようやく芽が出たのは1969年。『スペイス・オディティ』のヒットでようやくミュージシャンとしての成功を掴む。

『David Bowie – Space Oddity (Official Video)』。David Bowieより

それから3年後の1972年。デヴィッド・ボウイが発表したのは宇宙から来た架空のロックスター、ジギー・スターダストを題材とするコンセプトアルバムだった。

ジギーの存在はレコードの中に収まらず、デヴィッドは自らジギー・スターダストを演じてツアーをするという構想を実行に移す。

前髪は短く立たせて後ろ髪は長く伸ばし、全体を赤に染めた奇抜なヘアスタイルはジギー・スターダスト、そしてデヴィッド・ボウイの象徴となった。

バンドメンバーにも髪を伸ばすよう指示し、ステージに上がる際には化粧を施してジギーのバックバンド、スパイダーズ・フロム・マーズへと仕立てあげる。

1972年2月からイギリスで始まったジギー・スターダスト&スパイダーズ・フロム・マーズによるツアーは世間に衝撃を与えた。数年前まで長髪というだけで女みたいだと言われた時代に、ヒラヒラしたドレスや全身にピッタリと密着したタイツを着て歌う男など前代未聞だった。

だが、ジギーの中性的な輝きは多くの若者の心を掴み、新たな時代のロックスターの象徴となった。