ロック・スターの破滅的な最期を体現するため、飛び降りパフォーマンスも披露

日本の観客には言葉が通じないだろうと危惧していたボウイは、劇場性と肉体性に力を入れた派手なアクションやパフォーマンスで、ジギーの世界を表現しようとした。

ステージ上で次々と衣装が変わる度に、会場全体が大いに盛り上がった。そしてアンコールではついに全ての衣装を脱ぎ去った。

裸同然ともいえるサポーター姿になると、会場のボルテージはピークに到達した。本人によればこれも日本文化の相撲を意識した表現なのだという。

デヴィッド・ボウイが“飛び降り”で体現した「ロック・スターの破滅的な最期」…ライブに日本文化を取り入れて目指した新たな進化とは_2
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肉体的なパフォーマンスを追求するあまり、行き過ぎたことも起こった。

3m以上の高さから飛び降り、ロック・スターの破滅的な最期を体現してみせた時は、その代償として身体を激しく痛めてしまった。

ともあれ、進化を遂げていくボウイのパフォーマンスによって、日本公演は大盛況となって、行く先々で会場を熱狂の渦に包み込むのだった。

そんなボウイがツアーの合間に足を運んだのは、歌舞伎の舞台だった。女形のトップとして知られる歌舞伎役者の坂東玉三郎と対面し、直々に女形のメイクアップを教わった。

玉三郎は初めてボウイに会った時の印象について、ステージに上がっていない時であってもジギーを演じ続けているということに驚いたという。

しかし、長時間にわたって別の人格になりきるというのは、かなりの精神的な負担を強いることだった。それはデヴィッド・ボウイとて例外ではなく、次第にジギーを演じ続けることに苦痛を感じ始めた。

そして来日から3ヶ月後の7月3日。ハマースミス・オデオンのステージでボウイは突如、ジギーからの引退を宣言する。