漁協組合長は「私らはそういったことはわからない」

木村被告が「事件現場」に選んだ雑賀崎漁港は、とんだとばっちりを受けた恰好だ。雑賀崎漁業協同組合の組合長はこう振り返る。

「私は現場にいたんですが、爆弾が放り込まれる瞬間は見ていませんでした。突然大きな爆発音がなり、悲鳴が飛び交い、それで爆発したということがわかったしだいです。あの爆発で大きな怪我をした人もいなかったし、みんなが無事だったことは本当によかったです。飛んできた破片が手をかすめ擦り傷程度の怪我を負った漁師もいましたが、大事には至りませんでした。

といってもその破片は、まともに手で受けていたら手に穴が開いていてもおかしくない威力で飛んできましたから、本当によかった。何せ40メートル先の倉庫の壁に飛んだ破片は壁にめり込んでいましたからね」

雑賀崎漁港(撮影/集英社オンライン)
雑賀崎漁港(撮影/集英社オンライン)

木村被告手製の「パイプ爆弾」は、十分に殺傷能力のある危険な火器だったのだ。

「岸田首相が選挙の応援演説に来ていたところに爆弾を投げ込んだわけだから、そりゃ大変な騒ぎでしたよ。事件直後は警察の捜査なんかで数日間漁にも出られなかったし、その後を不安に思う側面もありました。ですけど、観光客が激減することもなく、今では普通に漁にも出ていますし、ふだん通りです。男を取り押さえた漁師も当時はマスコミに出たりと慌ただしくしていましたが、今は元通りの生活に戻りました」

木村被告が投稿したと思われるTwitter(現・X)
木村被告が投稿したと思われるTwitter(現・X)

後日、木村被告を取り押さえた漁師を含めた同漁協の関係者十数人がホテルに招かれ、岸田首相からお礼の言葉をかけられたという。

「私らは(支持率の問題や党内不祥事など)そういったことはわからない。ただ、みんな岸田首相にお礼を言ってもらえたことをひどく喜んでいただけです。岸田首相はひとりひとりに『ありがとう』と握手をしてくれて、みんなで記念写真を撮りました。

取り押さえた漁師に憧れて漁師になりたい人が増えたかって? いいや、むしろ減ってるな。襲撃犯がいまだに黙秘していると言われてもなあ。まあ、そうなんだって思うだけですね。いずれにせよ、事件の影響で漁に出られなくなったり、仕事にならなくなるってのもなくなったし、今はふだん通りの生活をみんな送っていますよ」

24歳の青年が手製爆弾に込めた大義とは何だったのか。いまやそんなことには誰も関心を寄せない、年の瀬が迫っている。

※「集英社オンライン」では、今回の事件について取材をしており、情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班