治療はなぜ減酒するのか、動機づけが大切

当院の減酒外来では、週に1度患者さんに通院していただきます。
治療は現在の状態を徹底的にヒアリングして、なぜお酒を減らしたいのかという動機をしっかり掘り起こすことと治療薬の処方の2つです。
とくに減酒する動機づけをしっかりすることは、減酒の成功率と比例します。

例えば、減酒の目的が家族のためなら、家族のために長生きしないといけない→お酒を飲んで体を壊すと家族が悲しむ→お酒を減らそう、というように減酒の動機とモチベーションを掘り起こすことが大切なのです。
その動機さえ自分の中に根付けば、減酒はうまくいくでしょう。

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動機の掘り起こしと一緒に、薬物療法もします。
現在、日本において減酒治療で使用できるお薬は、2019年3月に発売されたセリンクロ(一般名:ナルメフェン)のみです。

これは飲みたくなる気持ち(欲求)そのものが抑えられるお薬です。欲求が抑えられれば、少量のお酒で満足できます。その結果、服薬が継続し、飲酒量・多量飲酒日が半分に減るという報告がされています。

減酒外来のメリットは、アルコール依存症が重症化する前に早期治療ができ肝機能値、血圧値、糖尿病、高脂血症などの身体問題の改善が期待できることです。また、多量飲酒してしまう日数を減らし、休肝日を作れるので、気になる人はぜひ受診してみてください。

クリニックを受診するのに躊躇する人は、お酒の量を減らすのでなく、休肝日を作るようにしてみましょう。毎日飲んでいるなら、1日はお酒を飲まない日を作るようにしたほうが、日々の酒量を減らすより取り組みやすいはずです。

お酒を少し減らすだけでもさまざまな病気のリスクが軽減されます。
飲みすぎが心配な人にとって、「減酒外来」は今後の選択肢のひとつとして知っておくといいでしょう。

取材・文/百田なつき