解散前に語っていた「漫才に対する姿勢」
昨年、筆者は『まいにち、楽しんじ! 和牛・水田信二の日めくりカレンダー』の制作に携わりましたが、その打ち合わせで水田さんに感心させられたことがありました。
当日は、水田さんの持ちギャグ「おいしんじ」にかけた「〇〇しんじ」というワードを考える打ち合わせでした。水田さんは事前に「嬉しんじ」「素晴らしんじ」「気難しんじ」「わざとらしんじ」といったワードを60個以上も考えてきてくれたのです。
そのアイデアをもとに「あっちにもこっちにも気を遣いすぎると苦しんじ」といった水田さんの“繊細人生訓”や“屁理屈ポジティブ語録”をまとめていったのですが、水田さんは妥協することなくひとつひとつ丁寧に言葉を紡ぎ出し、制作時間は6時間にも及びました。
その打ち合わせのなかで、水田さんは「漫才に対する姿勢」について話してくれました。
「今でも漫才をする前は緊張します。解決方法は練習しかありません。ちゃんと練習できていれば、間違えるかもしれないという不安は薄れるけど、本番でウケるとは限りません。
かといって、『どうなってもいいや』とまったく緊張しないのは投げやりなだけでよくない。
緊張を怖がらず、もっとポジティブにとらえてもいいんじゃないかな。緊張するということは一生懸命に向き合っていることの表れですから。
緊張はなくならない。だから、『緊張を怖がらない』という心構えが“望ましんじ”だと思いますよ」
今後、完成度が高い緻密な和牛の漫才が見られなくなってしまうのは非常に残念です。しかし、また新たなカタチで個々のお笑いが見られることを楽しみに待ちたいと思います。
『まいにち、楽しんじ! 和牛・水田信二の日めくりカレンダー』
取材・文/インタビューマン山下