先生側にも対処法がわからない

たとえ低所得だとしても、両親がしっかりと子どもの特性を認識し、愛情を注ぎ、手を差しのべれば、子どもはできることを少しずつ広げていけるし、学力を向上させることもできる。

だが、親が生活や精神に余裕がなく、虐待などといった不適切な接し方をすれば、子どもの特性は大きくゆがんでしまうことになる。実際に児童自立支援施設の子供の9割が「発達障害+家庭問題」を抱えているという統計もある。実は、このような子どもたちが教育困難校に集まる傾向にあるのだ。退学にならないようなケースでも、次のようなことが頻繁にあるそうだ。

・生徒が同級生に対するストーカーになる
・学校の中で性非行(性行為、脱衣、痴漢、盗撮)をする
・ゲーム、ネット依存による不登校
・教員や生徒への思い込みによる言いがかり


学校の外でも、性や詐欺の被害に遭う(加害も)、ネットで誹謗中傷や個人情報漏洩をする、といったことも起きているそうだ。これでは健全な学校運営は望むべくもない。

首都圏の教育困難校の校長はこう述べる。

「学校だけでは生徒の行動をコントロールできません。親にも指導を頼みたいのですが、こういう生徒の親は往々にして、親自身も問題を抱えていることがしばしばです。子供と似たような、あるいはもっとひどいタイプが多い。学校が何を言っても聞く耳を持ってくれないどころか、反発してくることあります」

この校長の学校でも、生徒が「お腹がすいた」という理由で文化祭のために用意していたカレーライス用の米を生のままバリバリと食べてしまったり、「運動会に出たくない」という理由で体育館にあったバスケットボールを彫刻刀で刺して、10個以上のボールの空気を抜いたりしたことがあったそうだ。これらも通常では考えにくい行為だ。

写真はイメージです 写真/Shutterstock
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前述した東北の教育困難校で司書をしていた女性は言う。

「県の研修で発達障害について学ぶ機会はありますが、その知識が学校で実際に役に立つことはあまりありません。生徒たちの問題行動は、研修で教わる知識を超えてしまっているんです。そういうレベルじゃない。なので教育困難校に来た先生は、転勤になるまで何もせずおとなしくしているか、やめてしまうかどちらかです」