クールジャパン機構の後押しで海外出店に弾み

コロナ禍で一時売上高が4割減少した、一風堂を運営する力の源ホールディングスだが、回復が顕著になってきた。2024年3月期の売上高は2割の増収を見込んでいる。今期の売上高は300億円を突破する。

写真/Shutterstock
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一風堂はとんこつの「極 白丸元味」と醤油の「極 赤丸新味」、スパイスを利かせた「極 からか麺」の3つがメインで、シンプルな構成が特徴だ。従来のラーメンファンよりも、女性客などの取り込みに熱心だった。東京駅周辺に出店するにしても、町田商店は「東京ラーメン横丁」だが、一風堂は「丸の内ブリックスクエア」だ。ハイソサエティーな層を狙っている姿勢がうかがえる。

現在、一風堂が注力しているのが海外出店だ。一風堂は279店舗出店しているが、そのうち海外は137。およそ半分が海外の店舗となった。アジア圏だけでなく、イギリスやフランス、アメリカにも出店している。

一風堂は2014年に海外需要開拓支援機構から10億円の出資を受けた。このファンドはクールジャパン機構とも呼ばれ、海外展開の芽を持つ会社に出資をし、その後押しをするという役割を持っていた。クールジャパン機構は失敗ばかりが取り沙汰されたが、力の源ホールディングスは数少ない成功事例となった。

インフレが進むアメリカでは、ラーメン1杯が2000円でも売れるといわれている。こうした状況では海外のほうが稼ぎやすくもなるだろう。グローバルな店舗展開という他社とはまったく違う戦略で勝負を賭けている。

取材・文/不破聡