なんとなくのイメージで政策を決めている

大前提として、当初掲げられた3つの柱はそもそも適切だったのだろうか。藤井氏は「まったく適切ではありません。現在起きている少子化の主な原因は“出産最適齢期(35歳以下)の女性の婚姻率の低下”です。つまりは未婚化・晩婚化であり、3本の柱で緩和することは不十分です」と一蹴。

明らかに政府の戦略ミスと言えるが、なぜズレた柱を3本も用意してしまったのか。

「政府は『どうすれば結婚した女性が子供を作りたいと思ってもらえるのか?』ということに注力することが少子化対策になると思っています。そこから異次元の少子化対策の内容を決めているのです。
仮に3つの柱を首尾よく進められたところで、少子化問題の抜本的な改善ははかれないでしょう。ろくに原因も考えず『こうすれば少子化対策になるかも』くらいのイメージで政策を考えているからダメなのです」

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「こども家庭庁」の子ども政策に関する会議

こども家庭庁に対する評価

異次元の少子化対策を掲げて1年経過した。改めてその成果について、「話になりません」と回答。

「先述した通り、少子化の主な原因である“出産最適齢期の女性の婚姻率の低下”は、出産最適齢期の女性、ならびに出産最適齢期の女性の結婚対象者となる主に20~30代の男性の所得下落によって引き起こされています。実際、低所得者層と高所得者層では、婚姻率は仮に年齢が同じでも2倍前後も開いているのです。

若年層の経済的な負担・不安を緩和して、実質所得を増やすことが最大の少子化対策になります。にもかかわらず、“増税めがね”と揶揄されている通り、岸田首相は減税するどころか、増税を繰り返す始末。これでは実質所得が下落して少子化に歯止めはかけられません」

異次元の少子化対策がいかに期待できないのかがよくわかった。では、少子化だけでなく、児童虐待やいじめ問題など子供にかかわる問題を解決するため、2023年4月に発足された「こども家庭庁」についてはどのように見るのか。

藤井氏は「児童虐待やいじめ問題では成果を上げているのかなど、詳しくはわかりませんが」としつつ、「少子化対策としては若年層の賃上げが最も効果的であり、そこに対するアプローチは一切見せていません。こども家庭庁は適切な少子化対策はできていないと言えます」と続けた。