ロシアの元日はお祝いバカ騒ぎの番組ばかり
元日のレーニン廟前。誰もレーニン廟には目もくれていなかった。
さきほどからずっと小雨が降り続いている。体が冷えて来たので宿へ戻ることにする。これがモスクワの2023年の元日に僕がみた光景だ。フロントにクレームを言って、部屋のテレビを直してもらったが、日本のテレビと同じように新年用のロシア正教番組とか歌番組、愛国バラエティ番組(こうとしか言いようがない)ばかりでうんざりした。
ベラルーシからやってきたとかいうコメディアンたちが大喝采を受けていた。歌番組は、日本の紅白歌合戦みたいにロシアの人気歌手とかが総出で、ロシア万歳! みたいな歌ばかり歌っていて、見ていて気持ち悪くなってきた。
なかでもやっぱりあのSHAMANという一見ロック歌手のようなシンガーには閉口した。まあ、日本のかつてのXジャパンとかみたいなものか。衣装のセンス、お化粧の仕方、金ぴかで、きのう今日と赤の広場周辺で見てきた飾り付けとひどく共通している。不思議なことにこのホテルでは、「BBCワールド」が見られる。新年にキーウが攻撃されたニュースもこの部屋では見られるのだ。だがもちろんロシアの元日の番組は、お祝いバカ騒ぎの連続だ(日本と似ている)。
そしてもちろんロシアの一般国民は「BBCワールド」なんか見ていないだろうし、見たいとも思っていないのだろう。ロシア公共放送の『ヴェスチ』ではトップニュースが、プーチン大統領が軍人に囲まれての国民向け9分間の異例の長時間メッセージ、その後、新年を祝う各地の表情、ドネツクからの戦地特派員リポート。
日本では絶対に見られない代物だ。ロシアテレビの記者たちはこんなふうになってしまっている。ロシアによる正義の「特別軍事作戦」の宣伝係に。戦時中の日本の従軍記者のように。注意深くロシアテレビの放送をみていたが「バイナー」(戦争)という単語は一度も使われていなかった。いまだに戦争ではなく「特別軍事作戦」という範疇でしか語ってはならないのだ。
日本からのニュースをチェックするなかで、編集者の矢崎泰久さんが年末に亡くなられたことを知る。筑紫哲也さんの本を書いた際に長時間取材をさせていただいた。まだガキの頃、僕自身が『話の特集』をよく読んでいた。何でもありのいい雑誌だったな。合掌。