なぜ男性は座って用をたすようになったのか…「座る派」に転向した人々の4割が、本心では「立ちたい」と思っている事実
ある洗剤会社の調査によると、近年、男性で「小用をするときには座る派」が49%にのぼり、「立つ派」の45%を超えているという(2018年)。なぜ男性のトイレスタイルの意識が変わったのか、男性の心理を『ルールはそもそもなんのためにあるのか』より一部抜粋・再構成して解説する。
ルールはそもそもなんのためにあるのか #3
ゲーム理論を参考にすれば定着したルールを変えられる
定着したルールを変更させるためには、罰則を設けて命令したり、「こうした方が効率的なんですよ」「みんなのためになるんですよ」と口を酸っぱくして説得したりといった方法だけでは限界がある。逆に人間の利己性を利用した方がいい。
これまでのやり方を変えた方が自分自身の利益になる、また身近な人々との長期的な関係をよい状態で維持する、ということを経験させ、実感させる方が効果的なのである。
昭和の駄菓子屋のよい知恵がある。まだジュースの容器が瓶だった頃、飲み干した空き瓶をポイ捨てされないように、返してくれたら10円返金する、というものである。子どもたちはその10円でさらに駄菓子を買ったりゲームを楽しんだりした。いわゆるディポジット制度みたいなものである。
違反者に罰を科すことによって行動を改めさせようというのが、法律や条例などの常套手段であったが、前述したようにそれは監視・摘発をする人員を要するうえに、隠れて違反されることを止めることができないので不効率だ。
それよりも違反をしない方が自分の具体的な利得になるというシステムを作る方がよいのである。たとえば家電の不法投棄が社会問題になっているが、それは廃棄の時に高い負担金が課せられるからである。それよりは、新製品購入時に処理費用を一緒に徴収する方がマシだろう。
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夫婦同姓が婚姻の条件になるのはいまや日本のみである
「自分の娘がもし殺されたら司法になんか委ねたくないね」
ルールとは思考停止の遵法精神を要求するものではない
『ルールはそもそもなんのためにあるのか』 (ちくまプリマー新書)
住吉 雅美 (著)
11月9日発売
880円(税込)
176ページ
ISBN:978-4480684660
ブルシットなルールに従う前に考えてみよう!
この国で疲弊しているあなたには「法哲学」が必要だ
決められたことには疑問も持たず従うことが正しいと思っている人が日本社会には多い。だが、ルールはどういう趣旨で存在するのか、その目的を理解した上で従うものではないか?
ルールの原理を問い、武器に変える法哲学入門。
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ルールは、そもそも何でそういうルールが作られたのかという目的を考えなければ理解できないし、また、それを忠実に守ることによって自分が得られる利益と、それを破ることによって得られる利益とを天秤にかける必要も出てくる。……
私は、守った人が損をするルールはダメルールだと考えている。その意味では日本の議会、政府、自治体は、ルール作りがヘタッぴだなーと思っている。そういう怒りを込めて、この本を書こう。……
フランスのアナーキスト、ピエール・ジョセフ・プルードンは言った、「法律は、金持ちにとっては蜘蛛の巣。政府にとっては漁網、人民にとってはいくら身をよじっても脱けられない罠」だと。まさに今の日本の状況そのものじゃないか!……
こんな日本でルールをどう語ったら良いのか。政府や役所を信頼してもしょうがないから、庶民が各自の生活と命を守るための自生的なルールの可能性を考えてみよう。
(はじめにより)