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人の悪いところに注目してはいけない!

「減点法」で人を見ていると
イライラが止まらなくなる
――― エラスムス・ロッテルダム大学ヴァンディーレンドンクとスタムの研究


人生には人間関係の悩みがつきものですね。その典型的な問題の一つが、上司や部下、嫁と姑、先輩と後輩といった上下の人間関係で起きる問題です。

たとえば、「上司のパワハラに、もう耐えられない!」とか「部下がとにかく人の話を聞いてくれない!」とか、立場が違えば見方は変わるもので、ふとしたことがきっかけで相手のことが嫌いになってしまいます。

そして、気づけば嫌いな部分がたくさん見えてきます。「話し方が嫌い」「食べ方が嫌い」「髪型が嫌い」……そうすると最終的には「顔も見たくない!」とか「同じ空気を吸いたくない!」というように関係はどんどん悪化していきます。そんな事態は、どうにか避けたいものですね。

そこで、まず認識していただきたいのは脳にはネガティブな情報のほうに価値を見出しやすい傾向がある、ということです。

この効果を「ネガティビティ・バイアス」と言います。心理学者のジョナサン・ハイトは自著『しあわせ仮説』でこのように述べています。

「人の心というものは、良い物事に比べて、同程度に悪い物事に対して、よりすばやく、強く、持続的に反応するということが心理学者によって繰り返し見出されている。私たちの心は、脅威や侵害や失敗を発見して反応するように配線されているため、すべての物事を良く見ようとしても、単にできないのである」

要するに、ネガティブな情報が気になるのはあたりまえのことなのです。

カリフォルニア州立大学デイビス校のレジャーウッドらは、実験参加者を2つのグループに分け、「新しい手術法」に対する評価を調査しました。1つ目のグループには「成功率は70%」とポジティブに説明し、もう1つのグループには「失敗率は30%」とネガティブに説明しました。

その結果1つ目のグループはこの新しい手術を良いものであると見なし、2つ目のグループは良くないと考えました。

次に、最初のグループに、「失敗率は30%」と伝えました。すると、彼らはその手術は良くないものだと感じるようになりました。 そして30%の失敗率だと説明を受けていたグループは、「成功率は70%」と伝えても、彼らの意見は変わりませんでした。

つまり、彼らが最初に抱いた手術に対するネガティブな印象は消えなかったのです。このようなメカニズムで、私たちはついネガティブな情報を注目して見てしまう、ということを忘れてはいけません。