人間はだれにインスパイアされるか分からない

博士 だったら今回初めて言うけど。去年の参院選のときに声をかけたんだよ。だけど、「沖縄の知事選までは(ライターを)続けたいですから」と断られた。

畠山 そうでした。

博士 それで沖縄の後にと思っていたら、あの下地幹郎さんに力をもらい(22年の沖縄知事選に落選した翌朝に街頭演説するのを見て)、まさかの「やめるのはやめ、続けよう」と思い直す。あそこのシーンは好きですね。

畠山 「ダメージはないんですか?」と訊いたときの下地さんの答えにハッとした。「キミは途中であきらめるのか」と言われているように思ったんですね。

博士 だから人間はだれにインスパイアされるか分からないんだなあというのが、この映画の面白さですよね。

前田 確かに確かに。

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鼎談はオンラインで行われた

博士 映画の逸話で、ある候補者が自分は170キロのボールを「打てます」と言い切る面があるでしょう。大ボラにしか聞こえない。まあ実際打てようがなかろうが、それがどうしたという話なんだけれども。

畠山 多くの人は「選挙とは何の関係もない話じゃないか」と思いますよね。

博士 だけど、その真偽を確かめようとするその後の展開に感動するんだよね。

畠山 打てるかどうかもそうなんですが。そもそも170キロも出せるバッティングセンターが在るのか。疑わしいと思って調べたら、在るんですね。Nさんには会ったら「本当にありました」と謝ろうと思っていたんですけど、候補者と取材者というのは選挙が終わると、会う理由がなくなる。ところが、なんと今年の2月に渋谷で『劇場版センキョナンデス』のビラ配りを手伝っていたときに、たまたま私からビラを受け取ったのが岡山にいるはずのあのNさん。あ、ネタバレになりそうなのでここでやめます(笑)。

博士 奇跡のような偶然だねえ。ボクらはああいう人をイロモノとして見がちだけど、何度も立候補し続けるというのは強い信念をもった、常人には分からないパワーを秘めた人たち。そういう人を嘲笑なんかできない。むしろ自分の眼が誤っていたことに気づかされる映画じゃないかと思う。