博士の政策秘書を依頼された顛末

前田 私の個人的なことを言うと、『なぜ君は総理大臣になれないのか』に関わったことによって政治に対する興味が膨らんでいったんですよね。それまでは投票には行くけど、くらいだったのが、こんなに面白い世界があるのかと。そのころに畠山さんと出会うんですね。畠山さんの肩越しにカメラを向け、畠山さんが見ている風景を観たいと思ったのが今回の映画の発端でした。

博士 畠山さんはフリーライターですから「一発宝探し」に行っているんですよ。山師のように。一方で選挙に出る人全員に対して仰ぎ見るところがある。そこがスクープを狙う記者とは違うところ。

前田 私もそう思います。ずっと傍で見ていて、「食えない」「稼げない」「(選挙取材は)もうやめたい」と言いつづけるので、「独占スクープを狙わないんですか?」と尋ねたこともあったんです。だけども不思議なのは、畠山さんは25年間選挙を取材してきた独自ネタを全部開放し、他の人から「誰々の連絡先を知りたい」と言われると親切に繋いであげたりするんですよね。

博士 そういう人なんだよねえ。畠山さんには権力志向が感じられないから。

「ボクの政策秘書になってくれ」参院選で当選した水道橋博士の打診に“元祖・選挙ライター”の出した答えは…【映画『NO選挙,NO LIFE』を語る】_2
映画『NO選挙,NO LIFE』より

畠山 ああ!でも最近は違うんです。自分がやっていることには意味があり、これを広めるには自分が有名にならないといけない、発信力を高めないといけない、ということで「権力志向」はバリバリあるんですよ。

前田 あるんですか?

畠山 あります、あります。これまでは野良犬がワンワン吠えているなと無視されてきたんです。でも、自分に発信力があれば、それぞれの候補者のもつ物語に注目してもらえるだろうと思って。

博士 だったらボクの政策秘書になってくれないかと声をかけたときに「はい」と言ってくれたら、発信力を今までとは別の形に変えられたのに。

前田 えっ。私は何かそういう話があるんじゃないのかと感じとってはいたんですけど。畠山さんは口を割らないんですよね。

畠山 お互い墓場まで持っていく約束のヒミツでしたから。