前代未聞の「全皿半額キャンペーン」がターニングポイント

ただし、かっぱ寿司の原価率の改善は、2017年以前から始まっていたことも事実だ。

それでもしばらく集客に苦戦していたのは、消費者の間で「安かろう悪かろう」のイメージが根づいてしまったためだろう。

かっぱ寿司は食べ放題の導入、一貫50円から注文できる「ちょい食べ」、希少な高級魚クエや、大トロにキャビア、ウニをトッピングした贅沢寿司を提供するなど、粘り強く集客施策を繰り出していた。

しかし、決定打に欠けていた。そんな潮目を大きく変えたのが、2021年9月26日にたった一度だけ行った前代未聞の全皿半額キャンペーンだ。

待ち時間が10時間を超える店舗が出るなど、各店には大行列ができた。当時のかっぱ寿司のプレスリリースには、「本当においしくなった、と言えるからこそ、どうしても食べてもらいたい」と書かれている。

広告費削減のために手書きされた告知
広告費削減のために手書きされた告知

これは消費者に対する本音だろう。一度食べてもらえれば、これまでの評価が払拭できる自信があったのだ。一見するとやぶれかぶれにも見えるキャンペーンだが、既存店の客数では2022年に入ってスシローとくら寿司を上回るようになった。

しかし、カッパ・クリエイトに死角がないわけではない。昨年、代表取締役だった田邊公己氏が不正競争防止法違反で逮捕され、辞任した。今後の経営は「ステーキ宮」などを運営するアトムの社長だった新社長の山角豪氏の手腕に託される。

「くら寿司」は2030年までに海外店舗を約4倍の400店への拡大を掲げている 写真は台湾桃園市の店舗
「くら寿司」は2030年までに海外店舗を約4倍の400店への拡大を掲げている 写真は台湾桃園市の店舗
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また、現在もかっぱ寿司は低価格路線を維持しているため、人件費や原材料高の影響を抑える必要がある。自動化やデジタル化によるさらなるオペレーション改善も必要だ。

業績回復が鮮明になったさなかでの逮捕劇を乗り越えて、新社長のもと、利益率を高めるという次のステップに移行できるかどうかの分水嶺にいる。

取材・文/不破聡