岸田首相は「減税」や「還元」という言葉を多用するも…
「長崎も徳島・高知も、それぞれ地元の状況は全然違うのに、選挙が近づくにつれて同じように自民党にとって苦しい情勢になっていった。個別の選挙区事情が原因ではなく、そもそも国民全体が岸田政権や自民党を見限り始めている証拠だろう」
実際、岸田政権は9月13日に内閣改造を実施して以降も支持率は低迷している。
10月に報道各社が行った世論調査でも、読売新聞34%、朝日新聞29%、毎日新聞25%、共同通信32.3%と、過去最低レベルの数字が並んだ。
その原因となっているのが、岸田首相に今もついて回っている「増税クソメガネ」というバッドイメージだ。
昨年末に岸田首相が防衛費増額に伴う法人税、所得税、たばこ税の増税方針を決定して以降、今年10月には免税事業者だった事業主からも消費税を徴収するインボイス制度を導入し、これからは異次元の少子化対策の財源に充てるための社会保険料の引き上げも検討している。
国民負担が増える話ばかりで辟易している国民も多いことだろう。
こうした評判を払拭するためか、最近になって岸田首相は「減税」や「還元」という言葉を多用し始めた。
23日に行った所信表明演説でも、経済対策のポイントのひとつとして「国民への還元」を掲げ、「現世代の国民の努力によってもたらされた成長による税収の増収分の一部を公正かつ適正に『還元』し、物価高による国民の御負担を緩和する」と表明。
その具体的な内容については「近く政府与党政策懇談会を開催し、与党の税制調査会における早急な検討を、指示します」と述べるにとどめているが、すでに自民、公明両党では、1年限定で所得税から年収に関係なく同じ額を差し引く「定額減税」が案として挙がっている。
しかし、この減税を実現するためには、年末の与党税制調査会で具体的な内容を決め、来年の通常国会で関連の法律を成立させる必要がある。つまり、国民への「還元」が実現するのは早くても来春以降だ。
そのため、現在の物価高に対応するための即効性がなく、自民党内からも「『減税』と言って増税イメージを払拭するためだけの政策ではないか」と疑問の声が挙がっている。