警察とも「対話」が成り立った時代だった
対警察とのトラブルで忘れられないこともいくつかある。『ティーンズロード』4号の取材で福島のとある地方に行き、地元のレーシングチームを撮影していた時だ。
約20台近くの派手な改造車が市内のとある高台の駐車場に集結したので、いずれパトカーが来るだろうと覚悟はしていたが、予想以上に早くサイレンが鳴り響いてきた。それも1台、2台ではない。気がつけば、6台のパトカーに取り囲まれてしまった。
これはちょっと厄介なことになりそうだと覚悟したが、その時、ど派手な真っ赤な特攻服をまとった一人が、パトカーからゾロゾロ出てきた警察官に敢然とこう大声で怒鳴った。
「市内にパトカー7台しかないのに、ここに6台も来たら、今、なんか事件あったらどうすんだ!」
活字で書くと一触即発のように感じるかもしれないが、これが強い訛りのまじった言い方だったから、いまひとつ緊迫感にかけていた。さらにこの返しがまた傑作だった。
「それもそうだ、お前らあまり周りに迷惑かけないようにすぐに解散すんだぞ」
当然これも訛っていた。パトカーはさっさと退散してその後はゆっくり撮影できた。
何が言いたいかというと、確かに世間一般の常識ではこちらにも非があるわけだが、集まっただけで別に事件がその場で起きたわけではなければ、どこか大目に見るという寛容さがあったということだ。
何よりまだ、この頃は規則から逸脱していたとしても人間同士、対話して落とし所を見つけるという解決策が残っていたということだ。
文/比嘉健二












