飲料水さえ不足する人道的な危機
もともと今回の出来事は、ハマスがイスラエルを奇襲し、民間人含む1000人以上を殺害し、100人以上を人質として拉致したことから始まった。
イスラエル/パレスチナ問題では近年、とくにヨルダン川西岸地区でイスラエル強硬派入植者とイスラエル軍・治安当局がパレスチナ住民を暴力的に弾圧してきた経緯はあるが、今回のハマスの行為はまぎれもなくテロであり、その映像が広く報道されたこともあって、欧米を中心とする国際世論においてハマス批判が広がった。
しかし、ハマスのテロ攻撃に対し、イスラエル側は軍事的な反撃を行った。その過程で、イスラエル軍はガザ地区に過去に例のないレベルの猛烈な空爆を開始。さらに一般住民の命綱である水や食料、電気、燃料といったライフラインの遮断措置をとった。これは人道上でも許されない国際法違反であり、多方面から批判の声が上がった。国連のグテーレス事務総長なども、ハマスのテロを強く非難し、ハマスに対するイスラエルの自衛行動は認めながらも、民間人への攻撃は許されないと強調した。
しかし、イスラエル軍はその後も激しい空爆を続け、地上侵攻の準備も進めている。イスラエルは民間人の被害を回避するとの名目でガザ北部の110万人もの住民に南部への移動を通告。数日中に約半数が移動したが、病気で動けない家族がいる人や老人、移動手段のない人なども含め、まだ半数はガザ北部に留まっている。
ライフラインの遮断は北部に残った人々にとってもダメージだが、南部に一気に押し寄せた人々の間では危機的な状況になっている。エジプト国境が閉鎖されているため、人々は飲料水さえ不足する状況で、人道的危機といっていい。もちろんその間も空爆は続いており、数千人の住民が殺害されたとみられている。