がんに効くと「サルの脳みそ」を飲んで10年延命した徳間書店初代社長
鈴木 違う違う。知らないんだけど「オレが店の主人だったら、あのあたりに喫煙所を作るな」って本能的に分かるの。アカデミー賞に行ったときもルーヴル美術館に行ったときも「喫煙所はここかな」と思ったら、あるんだよ。
叶井 世界中の喫煙所、全部分かりますね。
鈴木 全部分かる。しかし話がぜんぜん本題にいかないねぇ。
叶井 いいんですよ、こういう話で!
鈴木 がんのこと、奥さんはなんて言ってるの?

叶井 悲しんでました。オレは全然悲しくなかったけど。去年の6月に「余命半年」って言われて「あー、半年か」って思うくらいでした。そこから1年たちましたね。
鈴木 これはもう今だからしゃべって構わないと思うんだけど、ジブリをつくってくれた徳間康快(徳間書店初代社長)も、がんで「余命1年」って言われて、そこから10年生きたんですよ。
叶井 マジですか? 10年? じゃあ一度治ったんでしょうね。
鈴木 分かんないけど、いろいろやってたよ。サルの脳みそ飲んだり。
叶井 サルの脳みそ……?
鈴木 それが効くってんで、さじでつまんで何かに溶かして飲んでた。太陽の光を浴びると、本当に美しかった。
叶井 鈴木さんの本(『歳月』岩波書店)で、徳間さんのスーツを形見分けしようとする顛末があったじゃないですか。あれを読んでびっくりしたんです。徳間さんって、すごくガタイがいい人だとオレは思ってたんだけど、スーツの内側全面にパッドが入っていて本当はすごい痩せていた、って。
鈴木 痩せてた。本にも書いたけど、亡くなる3日前に主治医から「隣のベッドに身体を移動して」って頼まれて「ぼくひとりじゃ無理ですよ」と答えたら、「軽いですから」って言うの。持ち上げてみたら、本当に軽かった。僕がいちばん悲しかったのは、そのときです。
叶井 病気で痩せたわけじゃなくて、もともと細かったと言うことですか。マジで驚いたんですよ、あのスーツの話。
鈴木 そう。「人は見てくれが大事だ」って言ってね。あの人は本当にそういう人だった。やっぱりすごいと思ったよ。でも余命宣告されたときは、さすがに荒れたらしいです。自宅の2階に部屋があったんだけれども、自分の部屋のテレビを階段の下に投げ捨てたりして。でも、そこからもう一度とにかく働き始めた。
#2へつづく
#2 末期がんで20キロ痩せた映画P・叶井俊太郎が中学の同級生でラッパー・Kダブシャインと振り返る“チーマー以前”の渋谷
構成/斎藤岬 写真/二瓶綾















