怖がらないために知るピルの副作用とリスク
ピルは、女性の生活にメリットをもたらす一方で、デメリットもあります。
デメリットの第一は、副作用のリスクです。
ピルは、からだの中に外から女性ホルモンをとりいれて、脳に「すでにエストロゲンとプロゲステロンがありますよ」と錯覚させることによって、排卵を起こさないようにするお薬です。服用したらすぐに効果があらわれるものではありますが、からだが慣れるまでに2カ月から3カ月かかることが多いです。
そのあいだに、不正出血や吐き気、むくみ、倦怠感、気分が落ち込む、肌が荒れるといったマイナートラブルが生じる場合があります。
もっとも多いのは不正出血で、服用した人の2割前後が経験するとされています。これらの症状は、からだがピルに慣れていけば気にならなくなっていく可能性が高いとされています。
それでもマイナートラブルが続くとか、やっぱりピルはからだに合わないという方もいらっしゃいます。あるいは、ピルを飲んでいるのに、生理痛や生理前のイマイチさが改善されたと感じられないケースもあります。
そのような場合は、そのピルを使うのをやめましょう、という判断をするでしょう。ただ、そのピルが合わなかったからといって、自分の調子の良さを手に入れることをあきらめなくてもいいのです。
40歳以上でのピルの服用には注意が必要
では、かわりにどんな方法があるかといえば、じつはひと口にピルといっても、いくつも種類があるんですよね。
例えば、エストロゲン含有量がより少ないピル(超低用量ピル)を試してみるとか、エストロゲンと合わせるプロゲステロン(正確にはプロゲスチン=黄体ホルモン)の種類を変えたお薬にしてみるとか、ピル以外のホルモン治療、プロゲスチン製剤(エストロゲンが含まれていないホルモン製剤)に変更してみるという方法も挙げられます。
また、月経困難症の原因が子宮内膜症や子宮筋腫といった疾患であるとはっきりしている場合は、手術という選択も視野に入ってきます。
いずれの場合でも、ピルを安全に使い続けるためには、自分のからだの状態をよく観察しながら、婦人科の医師とよく相談することが必要です。
ピルのリスクでもっとも重篤なものに、血栓症があります。例えば、片脚だけにギュッと握られたような痛みがある、ふくらはぎのあたりがうずくように痛む、といった症状は血栓症の疑いがあります。
今まで経験したことのないような激しい頭痛や、胸を刺すような鋭い痛みなども、血栓症の症状によくみられるものです。こういった症状があらわれたら、すぐに医師に相談してください。
ピルは原則的に閉経を迎えるまで服用できますが、年齢が高くなると血栓症のリスクが高くなるため、特に40歳以上では注意が必要です。
基礎疾患がないか、肥満や高血圧がないかなどで、リスクの評価は変わってきますが、ピルを服用しているあいだは定期的に受診をして、問題が生じていないかをチェックすることが大切です。
そのほかには、毎日決まった時間に服用しなければならないので、そのわずらわしさがデメリットになるかもしれません。
経済的な負担も軽く見ることはできません。低用量ピルの値段は、本書を執筆している2023年8月時点で、保険診療で処方される場合は1シート(約1カ月分)500~2350円程度です。そのほかにクリニックの診察代がかかります。
デメリットをたくさん挙げたので心配になってしまったかもしれませんが、かかりつけの医師としっかりコミュニケーションをとり、メリットとデメリットを比較して、自分にとってプラスになるような選択をしたいものです。
女性は一生を通じて女性ホルモンに大きく揺さぶられます。だからこそ、私たちのほうから、積極的に女性ホルモンをマネジメントするような選択ができないか考えていきたいものです。ピルについて正しく知ることは、その選択肢を一つ増やすことになりえるでしょう。
文/高尾美穂 構成/長瀬千雅
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