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「学校に行きたくない」それ、ホルモンバランスの影響では?

お母さん世代の方に、ご自身の若いころを振り返っていただきたいのですが、「自分がどういうときに調子が悪いと感じるか」について、自分なりに把握できるようになるまでには、けっこうな時間がかかったのではないでしょうか。

自分がなぜイライラするのかわからず、しばらくするとイライラは収まるのだけれど、なぜ収まるのかもわからない。それを何度か繰り返すうちに、どこかでPMSという言葉に出合い、「もしかして私のイライラの原因はこれかも」というふうに気づいていったと思うのです。

思春期の娘さんが、体調不良を訴えて「学校に行きたくない」と言うとき、体調不良の原因がはっきりしないことはよくあります。病院でいろいろ検査をしても異常が見つからないとすると、慢性的なストレスによる自律神経の働きの不具合などが考えられるでしょう。

ただ、それに加えて、すでに生理のある年齢の場合は、月経周期にともなう不調を疑ってみていただきたいのです。

生理痛の場合は、出血しているときに痛みやつらさを感じるので、子ども自身が「生理でつらい」と理解することができますが、PMSの場合、「自分のつらさはPMSによるものだ」と思いつくためには、ある程度の知識と観察が必要になってきます。

そう考えると、まだ月経周期が安定しないような年齢の娘さんにとっては、自分の体調不良が生理と関係があるかもしれないという考えに至るのは、なかなか難しいかもしれないですよね。

実際に、娘が学校を休みがちなことを心配した親が、体調不良のタイミングと生理のタイミングに関連があることに気づき、婦人科で治療を始めたところ、学校を休まず通えるようになったという例もあります。

「学校に行きたくない」「やせたい」…思春期の娘との向き合い方をNHKで人気の産婦人科医が伝授。娘世代にも深くかかわるホルモンバランスの崩れって?_1
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生理痛やPMSといった、生理にまつわる不調を放っておかないでほしいのは、からだやこころがつらいという目の前の困りごとのほかにも、未来においていろんなデメリットを生じさせるからです。

まず、学校に通う年代の女性の生理痛が重い場合、そうでない女性と比べて、学校を欠席する回数が増えることが、有意な差をもって報告されています。欠席の回数が増えれば、授業についていくことが難しくなるかもしれませんし、学校の成績が下がることにもつながるでしょう。

学業以外にも、重い生理痛が家族や友人との関係に良くない影響を及ぼすことも知られています。学校を休みがちになると友だちとの関係をうまく築けないというのは想像しやすいでしょう。

家庭内では、娘さんの側からすると、自分がつらい状態を訴えたときの対応によって、家族に対して不満が残ります。

一方、家族の側からすると、娘さんのつらさが理解できず「生理痛ぐらいで学校に行かないなんて、なまけてるんじゃないの」という気持ちが生まれることもある。

そうすると、お互いに相手に対する信頼が損なわれてしまうという悪循環が生じてしまいます。

それ以外にも、痛みのために十分な睡眠がとれなくて、うつになりやすくなるとか、さらには、自傷行為を引き起こす割合が増えるという報告もあります。

これらの報告は、生理痛が重い場合(月経困難症)の研究によるものではありますが、わかりやすい痛みではなくても、生理からくる体調不良によって、同じような結果が生じることは十分に考えられます。

「学校に行きたくない」という理由は、必ずしも生理や女性ホルモンにまつわるトラブルとは限りませんが、その可能性もあることを念頭に置いて、しっかりと娘さんの話を聞いてくださればと思います。

そして、生理痛やPMSに対してどのように対処するかというのも、お母さん世代の経験と、現在のスタンダードではかなり異なります。

「私のころは多少体調が悪くても我慢して学校に行ったものだ」という「自分バイアス」は持たず、まずは話を聞く、そして困っている本人の立場に立ってみて、かける言葉を選んでください。

その上で、治療へのアクセスなど、前向きな対策を一緒に探してみていただければありがたいです。