生理不順や無月経でもあわてないで
「小学校高学年ぐらいになると初潮がくる」とお話ししましたが、初潮年齢は人によってばらつきがあります。中学生で初潮を迎える人もめずらしくありません。
それが、15歳をすぎてもはじめての生理がこないと「ちょっと遅いかな」となり、18歳をすぎても生理がこない場合は「原発性無月経」と呼ばれます。
では、無月経だと何が問題なのでしょう。
じつは、出血がないことそのものが問題なのではありません。生理の出血はいわば二次的な産物です。
では何の産物かといえば、「卵巣からエストロゲンが分泌されること」です。つまり、無月経の問題点は、エストロゲンが十分に分泌されていないことであり、そのために必要なエネルギーが摂取されていないことなのです。
私は婦人科のスポーツドクターとして女性アスリートのサポートをしていますが、10代の女性アスリートが厳しいトレーニングをして生理が止まってしまうとか、高校生になっても初潮がこないといった無月経にまつわる課題は少なくありません。
生理がくるべき年代にこないのは、成長期の女性にとって望ましくない状態です。
エストロゲンには、排卵をうながすほかにも、骨の代謝に影響して骨を強く保ったり、コラーゲンの産生をうながして肌の弾力やうるおいを保ったりする働きがあります。エストロゲンが失われると骨がもろくなることから、女性アスリートはエストロゲンがある状態で競技を続けるのが望ましいです。
実際にジュニアアスリート本人や保護者から相談を受けたときは、生理のない状態を長期間(3カ月以上)放置せず、婦人科を受診するようアドバイスしています。
また、15歳をすぎても初潮がこなかったら、一度婦人科を受診してくださいと伝えています。
多くの娘さんは習慣的に運動をしているかもしれませんが、本格的な競技生活を送っているわけではないと思いますので、そこまで切羽詰まった心配をする必要はないかもしれません。
例えば、初潮はきたけれども生理のサイクルが安定しない、次の生理がくるまでに数カ月あいてしまう、逆に早くきてしまうといった場合は、エストロゲンの分泌はある程度保たれているとみることができますので、「今すぐ婦人科にかからなきゃ!」という状態ではないと考えて良いでしょう。
ただし、初潮から数年経っても生理不順が続く場合は、婦人科受診を検討されるといいかもしれません。
一方、からだは十分に成長しているのに、18歳をすぎても初潮がない場合は、エストロゲンの分泌がない(少ない)ために生理がこないのか、エストロゲンは十分分泌されているのに生理がこないのかを判断する必要が出てきます。
それぞれ対策・方法は異なるため、婦人科を受診し、アドバイスを受けてください。
文/高尾美穂 構成/長瀬千雅 図版/朝日新聞メディアプロダクション
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