木漏れ日に包まれて
公園は、気象に関する様々な物理現象が見られる格好のスポットです。
植物は呼吸をしているため、雨上がりなどには水を吸った木が水蒸気を吐き出すようになり、木が多いとそれだけ多くの水蒸気が空気中に供給されます(蒸発散)。空気中の水蒸気の量が増えると飽和して、森林雲と呼ばれる霧のような雲が現れることもあります。
朝、樹木の茂る公園では、天使の梯子のような現象に出会うこともあります。夜間に地面から熱が逃げて地上付近の気温が下がる放射冷却に加えて、植物からの水蒸気の供給もある朝の森では空気がよく湿り、靄がかかりやすい状況です。
細かな水滴が空気中に浮いているため、そこに日光が当たると光の経路が可視化され、天使の梯子とも呼ばれる「薄明光線」になるのです。
このように、森では地表付近の空気の層が特徴的なため、この層は「森林キャノピー層」と呼ばれています。また、都市でも「都市キャノピー層」という層ができます。
「キャノピー」はもともと、仏像や昔の高貴な人が使用していたベッドの上についている天蓋という意味で、気象学では空の一部や全部が建物や植物の枝葉で覆われた空間のことを指しています。
文/荒木健太郎
写真/©『読み終えた瞬間、空が美しく見える気象のはなし』