TikTokは屋台、YouTubeはレストラン

「アプリを通して、1人でも2人でも、葦原海を知ってくださる人をつくろう。その人たちが『エンタメの力で健常者と障がい者の壁を壊す』という活動に興味をもって、ファンになってくれたら成功!」

ごはんを食べる時間まで削るみたいな無理はせず、負担は最低限。TikTokもYouTubeも、着実に小さな目標をクリアしていく。

あまり詳しくなかったから、まずは研究から始めた。

「TikTokはおすすめ機能で、いろんなものがランダムに流れてくるから、最初の1、2秒で『続きが見たい』と思われる動画がいい」

「車椅子で、両足がなくて、若くて、おしゃれとディズニーが好きで……そういう自分のポイントがしっかり見えるようにしよう」

TikTokのダンス動画は顔のアップで始まったりするけど、私には合わない。全身でスタートして、パッと一瞬で「車椅子」という特徴がわかるように。

名前や投稿文が出るラインに大事な部分がかぶらないように基本も忘れずに。

「これは本気でやったほうがいい!」16歳で両足を失ったモデル・葦原海がSNSに挑戦して感じた“環境の変化”_2
『私はないものを数えない。』より ©︎ Sumiyo IDA

最近、知り合いがライブ配信で、すごくわかりやすく説明していた。

「TikTokはお祭りの屋台と同じだから、みんな通りすがりだ。目的もなく、たららーっと歩いていて、『あ、食べたい』と思ったら買う。TikTokも流れていて『おもしろそう』と思ったら見るし、興味がなかったらスクロール」

その人が言うには、YouTubeはレストランだ。

「レストランに行くなら、料理や雰囲気について事前に細かく調べて、『ここ』と決めてお店に行く。だからYouTubeのタイトルとサムネイルには、料理、インテリア、メニュー、営業時間みたいな基本情報をちゃんと入れたほうがいい」

要するに、どんなに中身が凝っていてもYouTubeを見るかどうかは、サムネイルとタイトルでほぼ決まるということ。もちろんレストランなんだから、中身もしっかりしていないといけない。