背後から「あたいもいれてえー!」と大柄な女の子が…
ただならぬ気配を察知し、真っ先に動いたのが〝ファイティング・コンピューター〟ことウォーズマンだ。まだ事態を飲み込めていないキン肉マンにチビッ子たちの避難誘導を促すと、襲い掛かってきた悪魔超人に応戦。ところが、ウォーズマンは正体を現した7人の1人、穴の開いた顔面と漆黒の肌を持つブラックホールにあっさり投げ飛ばされてしまった。そこに、マントを脱ぎ捨てた新たな影が猛突進する。
館内に響き渡る、すさまじい衝突音。
「交通事故以上の衝撃だったと思います。闘牛のような突進で2本の角に突き上げられたウォーズマンの体は、きりもみ状に舞い上がって、ドリルみたいに回転しながらリングに落下しました。あまりの勢いに、ウォーズマンの上半身がマットにめり込み、螺旋のようなシワを作っていました」(同前)
身の丈2メートルを優に超える筋骨隆々の巨躯。ブルーザー・ブロディを彷彿とさせる長めのウェーブヘア。頭部から突き出した禍々しい一対のロングホーン。それが、おそらく初めて世間に認識されたであろうバッファローマンの姿だった。驚愕し、硬直しているキン肉マンを見据え、当時はまだ顎鬚をたくわえていたバッファローマンが口頭で挑戦状を叩きつける。
その場にいた超人オリンピック担当記者が語る。
「バッファローマンが挑戦状を叩きつけると同時に、他の悪魔超人も一斉にマントを脱ぎ、その姿を現しました。一部の超人はこの時まだオーバーボディを身に纏っていたことが後に判明していますが、それはさておき、リングに上がった彼らは、自分たちが出場していない超人オリンピックで優勝したキン肉マンをチャンピオンとは認めないと主張し始めたんです。要するに、王者を名乗るなら、我々を倒してからにしろと」
かくも傍若無人な悪魔超人たちは、いったいどこから現れたのか――。
発端は、数日前に遡る。大田区田園調布でキン肉マンの超人オリンピック2連覇を記念する祝賀パレードが行われたその日、お気に入りのカーニバル衣装に身を包んだキン肉マンは、お立ち台の上で決めポーズを交えながら、沿道の観客に無邪気な笑顔を振りまいていた。
事件が起きたのは、そのお調子者が路上に降り立った時のことだ。珍しく若い女性ファンたちが彼を取り囲むと、掛け声を上げながら胴上げを始めた。その輪に加わっていたB子さんが振り返る。
「背後から『あたいもいれてえー!』と声がして、足音が近づいてきたんです。一瞬、何が起きたか分かりませんでした。ビュバッという音がしたかと思うと、キン肉マンさんが消えてしまったんです。気づくと、私の隣に大柄な女の子がいて、不思議そうに空を見上げていました。花柄のお洋服、三つ編みのツインテールの子です。彼女のパワフル過ぎるワッショイで、キン肉マンさんの体が空に飛んで行ってしまったみたいで。あの子は超人だったんじゃないでしょうか」